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清流守り引き継ぐ

若だんな、店主らごみ清掃に汗

■1人1人の力■ 

 軍手に長靴、首にはタオル。旅館の若だんなや商店主ら10人ほどが6月6日、今年2回目となる川の清掃をした。


写真:写真説明
新緑を縫って流れる四万川(6月上旬)

 空き缶やスプレー缶、ガスコンロに掃除機――。1時間ほどで軽トラックの荷台は一杯に。幹線道路からも川が見えやすいように、岸の雑草を刈り取った。住民50人ほどによる「四万を日本一きれいにする会」の元会長、北沢浩三(69)が力を込める。「1人1人の力が、清流を守っている」

 会の結成は7年前。「県内四大温泉」の一つとされながら、草津や伊香保に比べれば、名が知られていない。どう売り出せば――。温泉協会や青年部は頭をひねった。

 「自然と湯」。会合のたび、誰もが魅力として挙げる。反面、川には木片や空き缶が目立つことも気になっていた。「自然が自慢なら、川を大切にしないと」。話は動きだした。まず、すべきことは足元に。会は以来、年3〜4回、清掃を続けている。


写真:写真説明
四万川の清掃をする(右から)戸谷嘉浩さん、北沢浩三さん、山田博史さん、田村浩基さん

 田村浩基(43)は「つばたや旅館」、戸谷嘉浩(29)は「寿屋旅館」の跡取り。山田博史(37)は「わしの屋酒店」の3代目。遊び場は、いつも川だった。

 イワナやヤマメを追い、川沿いに穴を掘り、「基地」を作った。みんな、東京や千葉などで一度は会社勤めをした。結局、自然が残る古里が好きで戻ってきた。「四万の顔は四万川。清流を引き継ぐことが、僕たちの責任」

   ◎

■ゆるり旅■ 


写真:写真説明
中沢まち子さん
 ゆったりとした清流に、街の流れを合わせよう――。昨年から始まったキャンペーン「ゆっくり走ろう温泉街」。

 車の時速は20キロ程度に抑えてもらい、観光客にはゆっくりと散策してもらう。考案した「なかざわ旅館」の女将、中沢まち子(45)は「車が速度を落とせば事故も減る。車と人が譲り合い、温かい気持ちが芽生える」。今後、看板やのぼりを立て、運動は加速させる考えだ。


写真:写真説明
四万川を描いた油絵の前に立つ山野芳雄さん
 6月は、温泉協会が音頭を取る「ゆるり旅」を展開中。旅館や喫茶店、商店など29店が油絵や陶器を展示したり、ハーブティーを振る舞ったり。それぞれ、客をゆっくりともてなす企画を用意する。

 「やまの旅館」の主人、山野芳雄(78)は四万川を描いた自作の油絵を玄関に掲げる。かつては温泉街で写真館を営んだ。宴会の記念撮影を頼まれては、旅館をはしごした。本格的に絵を始めたのは3年前。風景を写真に撮り、油絵に描く。

 「絵は表現が自由でしょ。自然とかかわる一つの方法」


写真:写真説明
四万川を描いた油絵の前に立つ山野芳雄さん
     ◎

 「入って良し、飲んでよし。日本一の湯ですよ」。400年近く続く老舗「四万やまぐち館」の女将、田村久美子(57)が胸を張る。旅館の下からわき出す源泉は52〜58度。浴槽に流れ込む川のせせらぎの音を聞きながら、ちょっと熱めの湯に身を預ける。

 34年前、田村は伊香保の温泉宿から嫁いできた。ニキビ症だった肌は、1日3回入る湯でつるつるに。田村が考え、10年前から売り出す温泉入りの化粧水は、女性宿泊客に根強い人気を誇る。

     ◎

 四万川が温泉街の中心を、ここに生きる人の芯を貫く。流れに沿って、あかりがともった。

(敬称略)

加地永治

 【四万温泉】「世のちり洗う四万温泉」(上毛かるた)。四万種類の病に効く湯として、名が付いたとされる。湯治場としての歴史は古く、天正年間(1500年代後半)と言われる。上信越高原国立公園内にあり、1954年には、国民保養温泉地の第1号に指定された。温泉協会には現在、旅館、商店など93店舗が加盟し、昨年1年間の観光客は約51万4000人。

 JR吾妻線中之条駅から、バスで約45分。

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