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高齢出所者に救いの手<91>

県地域生活支援センター8か月 

男性(手前)から近況報告を聞く道下さん(広島市南区の県地域生活定着支援センターで)

 刑務所を出所後、身寄りのない知的障害者や高齢者の生活を支える県地域生活定着支援センター。県が昨年6月、広島市南区に開設して以来、65歳以上の高齢者9人の自立を手助けしてきた。不況による生活苦や孤独感から、高齢者の犯罪は増加傾向にあり、再犯も目立つ。〈負の連鎖〉を断ち切るため、センターの役割は増すとともに、課題も残されている。(平井宏一郎)

 「自分のことを気に掛けてくれる人がいる。それだけで人生が変わった」。センター開所直後に出所し、すぐに生活保護受給の申請手続きを手伝ってもらった男性(74)が語った。

 かつては「まっとうに働いていた」。妻や子どももいたが、約15年前に「人から金をだまし取って」逮捕されて一変。出所後は家族と疎遠になり、連絡を取っていない。

 帰る家はなく、仕事も見つからない。ホームレスの生活に心がすさみ、「手っ取り早く金が入る」と、同じ犯罪に手を染めた。刑期を終えても「社会に居場所がない」と、過ちを繰り返す人生となった。

 「でも、今は違う」と男性は断言する。センターの支援を受けて見つけた新しい我が家では、近所の住民とも打ち解け、新生活は軌道に乗りつつある。センターにちょくちょく顔を出しては、うれしそうに近況を報告している。

      ◇

 県警や県によると、県内では刑法犯罪が減少しつつある一方、容疑者で65歳以上が占める割合は増加の一途をたどっている。

 2000年は8482人のうち、高齢者は7%の597人だったのが、03年には8500人中878人と10%を突破。09年は7680人中1127人で14・7%に達した。全国調査では、5年以内の再犯率は7割に上るとされる。

 そこでセンターでは、社会福祉士5人が出所前から保護観察所と連絡を取り合い、本人との面接で希望を聞き、出所後に向けた準備を進める。これまでに高齢受刑者18人の相談に乗り、9人にはアパートを探したり、その後の生活相談を受け付けたりしている。

 「人間関係が重要なだけに、希望者が増えた場合に現在の人員や体制で、一人ひとりに対してきめ細かなフォローができるか不安だ」と、スタッフの道下整さん(45)は打ち明ける。

 男性は「社会に居場所のなかった自分に手を差し伸べてくれたスタッフのためにも、二度と足を踏み外さない」と決意した。道下さんはそんな姿に、「支援の輪をセンター以外の地域全体に広げ、出所者を受け入れる体制を築かなければならない」と誓う。

 ■県地域生活定着支援センター

 高齢者や知的障害者が福祉制度を知らず、生活困窮などを理由にした再犯の例が多いことから、都道府県が設置するよう国が制度化した。

2011年2月27日  読売新聞)
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