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(4)伝統話芸に時代の息吹三遊亭神楽(さんゆうてい・じんらく)さん 落語家 37 (青森県出身)
本名は神博充(じん・ひろみつ)。青森市生まれ。県立青森戸山高校、立正大卒。サラリーマン生活を経て円楽一門へ。2000年に二つ目、今年10月に真打ち昇進。「阿武松(おうのまつ)」などの古典が得意。来年6月、青森市で昇進披露の落語会を開く予定。 ■■■ ![]() 「若い人たちにも落語の魅力を知ってほしい」と語る三遊亭神楽さん(東京都江戸川区で)=高橋はるか撮影
小学生のころ、漫才ブームでした。B&Bさんや、オール阪神・巨人さん。その話芸にひかれ、友だちを笑わせていました。でも、自分が落語家になるとは思わなかった。高校卒業まで、ずっと津軽弁でしたから。
大学を卒業した1992年、胸を膨らませて入社したんです。成長する業界だと思っていましたから。でも、待っていたのは深夜に顧客データを集計する仕事。週3日、午後3時から朝9時まで仮眠もせずに働き詰めです。心も体も疲れ果て、結局、2年で辞めました。 退社後の数か月間は、アパートがあった埼玉県でパチンコ店に入り浸る日々でした。転機は95年の夏。実家に帰省した際のことです。 三遊亭円楽師匠の娘さんが私の兄と知り合いで、青森へねぶた見物に来ました。その時、娘さんが「あなた、面白いじゃない。落語をやってみれば」と言ってくれたんです。「やってみたいな」と思いました。でも、即答はしませんでした。
初めて会った円楽師匠は「噺家(はなしか)でなくタレントになりたいんなら(入門は)やめなさい。それと、なまりは直さなきゃダメだよ」と言いました。「津軽弁を直して、江戸時代の登場人物を演じられるだろうか……」。不安でしたね。 翌月入門し、雑用などをする「前座」としての修業が始まりました。着物のたたみ方、お茶の入れ方、(高座の演目が重複しないよう次の演者に伝える)根多(ねた)帳の付け方など、楽屋仕事を兄弟子から教わりました。 お茶は1日に20回以上も入れます。7人いる前座の中で責任者の「立(たて)前座」を務めていた時、後輩の粗相で演者に「ばか野郎!」とどなられたこともあります。 入門1か月後、師匠に初めて見ていただいた。「全然ダメ。なってない」と言われました。それからは、師匠の噺を録音したテープを聞き、紙に書き写して音読し、最後に暗唱する。そんな稽古(けいこ)を演目ごとに100回、200回と繰り返しましたよ。
日本の伝統文化が見直されており、「笑い」の中でも落語の地位は揺るがない。ただ、映画や演劇、インターネットなどさまざまな娯楽の中で、落語も時代に応じて変わらなくてはいけないと思います。若い人たちに「年寄り臭い」と毛嫌いされず、聞いてもらいたいですね。
青森には自然が残されている。食べ物も水も、おいしい。住み続けられれば理想的ですが、都会などの生活を一度経験してから戻るのも悪くはないでしょう。かつて国内外を放浪していたころ、古里への思いがとても強まったことを今も忘れません。(聞き手・むつ通信部 永野慎一) 東北出身者少ない落語界![]() 「定席」の一つ、1946年に建てられた東京・新宿の末広亭
噺家(はなしか)総数が500人以上とされる東京落語界。東北地方の出身者は少ない。 落語協会、落語芸術協会、円楽一門、立川流の4派によると、羽織着用が許され、一人前とみなされる「二つ目」以上の落語家のうち、東北出身者は15人。出身県別では青森の6人が最多で、山形3人、宮城と福島は各2人、秋田と岩手は1人ずつだ。 少ない理由について、約300人が所属する落語協会(鈴々舎馬風会長)では「東京などと違い、落語を身近な場所で聞く機会が少ないことも影響しているのでは」とみている。 三遊亭神楽さんが高座を務めるのは東京・両国の「お江戸両国亭」。都内には、ほぼ年中いつでも落語が聞ける「定席」も4か所(上野、新宿、浅草、池袋)あるが、東北から出掛けるのは容易ではない。 神楽さんは言葉の問題も指摘する。落語に登場する江戸時代の人物。その独特の口調を完全にマスターすることは「東北出身者には難しい」と痛感している。だが、「落語家にとって方言がハンディキャップになるとは限らない。自分の特徴の一つと考えてもいいのでは」と、前向きに受け止めている。 (2007年12月8日 読売新聞)
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