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第6部 「地域医療の行方」〈7〉

紋別など5市町村、難産の末 広域連合移管

道立紋別病院の運営方法を話し合う協議会で、周辺4町村の首長と協議する宮川紋別市長(19日、紋別市役所で)

 連載「命あしたへ」第6部では、地域医療に様々な立場でかかわる有識者のインタビューを通して、北海道の医療現場が抱える課題や対策を考えてきた。そこから浮かび上がる課題の一つに、道内各市町村が対応に苦慮している「公立病院改革プラン」がある。昨年9月に開始した本連載を終えるにあたり、道立病院の経営を「広域連合」に移管しようとしている紋別市など5市町村の道内初の試みを紹介したい。

 5市町村で構成する西紋別は佐賀県より面積が広く、人口約4万人の過疎地域だ。地域最大の医療機関の紋別病院は17診療科で220床を持つが、年間赤字は10億円を超える。

 4年前に23人いた常勤医は半減し、今年3月には重症患者を受け入れる2次救急も休止した。道は昨年11月に民営化の方針を示しており、このままだと経営合理化に伴う機能縮小は避けられない。

 このため、5市町村は2月に協議会を設け、同病院を引き受ける方法を検討した。医師不足の背景には、道の給与体系に縛られる道立病院だと、他病院に比べて医師給与が低いという事情があり、市町村のように「待遇改善」で医師を呼び込むことが難しかった。そこで、複数自治体の「広域連合」という新手法を採用することにした。

 だが、その後の協議では、自治体間の思惑の違いも表面化した。雄武、興部、滝上町と西興部村の4町村は、自前の病院・診療所を持ち、既に財政負担を抱えている。協議会では、紋別市の宮川良一市長への風当たりが強まった。

 町立病院の昨年度の赤字が約1億3000万円に上る興部町の硲(はざま)一寿町長は、「我々はすでに町民1人あたり3万円の負担がある。紋別市は市立病院として運営するぐらいの覚悟を持ってほしい」と述べ、財政負担を宮川市長に迫った。

 協議会では、経営効率化を進めるため、〈1〉4町村の病院・診療所を広域連合で一括運営〈2〉3町立病院を診療所に縮小し、紋別病院に医療機能を集中――という再編案も議論されたが、4町村は地元病院の機能維持を譲らなかった。

 具体的な合意がまとまったのは今月19日。紋別市以外の4町村は、入院・手術などの2次医療の必要経費だけを患者数に応じて負担するにとどめた。道に対しては、移管後8年間の赤字補てんと病院建て替えの費用負担を求めていく。2010年度の開院を目指し、方針を年内にも道に示す。

 道は広域連合に経営移管する方針だが、5市町村の要求への回答は来年度に持ち越される可能性もある。宮川市長は「早急に2次救急を再開させ、西紋別の医療体制を整えたい」と力説する。いくつもの難題に直面しながら、地域医療の再生を目指す挑戦は、今後も続く。

 ◆道立紋別病院の経営移管を巡る動き

2007年11月 道が道立7病院の民営化方針打ち出す

     12月 総務省が公立病院改革ガイドラインを公表

  08年 2月 紋別市など5市町村が、同病院を広域連合で運営することで合意

      3月 紋別病院の常勤医12人のうち内科医3人が退職、2次救急の受け入れ停止

     11月 5市町村が広域連合で運営するための具体的方針を決定

 【公立病院改革プラン】 総務省が全国の自治体に今年度内の報告を求めている公立病院の経営効率化計画。公立病院の赤字で自治体財政の破綻(はたん)が懸念されるため、同省が昨年12月にまとめた「公立病院改革ガイドライン(指針)」に盛り込まれた。3年以内に経営効率化を実現し、5年以内に近隣病院との再編を進めるよう求めている。ベッド利用率が3年連続70%未満の病院には、病床削減や診療所化を勧告している。

    ◇

 自治体病院の医師不足で道内の地域医療をめぐる状況は厳しさを増している。だが、何とか医療崩壊を食い止めようと、各地の病院などは知恵を絞り、独自の対策を講じている。

 ■院長の発案

 地域医療を立て直すには、魅力ある病院運営も大切だ。

 中頓別町国保病院では、町の8割を占める広い森に着目し、独自の「森林療法ドック」を開設している。4年前に赴任した院長が発案したもので、森林でのウオーキングに健康指導を組み合わせた。町民の肥満予防に役立つ上、先進的な予防医療として医療関係者の注目を集めている。

 こうした効果から、昨年は6年ぶりの新人看護師採用に成功した。来春も看護師1人の採用が内定している。

 ■信頼関係

 根室市では昨年10月、市立根室病院に赴任してきた医師と交流する市民グループ「ねむろ医心伝信ネットワーク会議」が発足した。バーベキューなどで根室自慢の海鮮料理を振る舞い、医師に感謝を伝えるのが狙い。医師との信頼関係を築き、長く勤めてもらいたいと、住民が努力している。

 ■利便性

 松前町立松前病院は2年前から、隣の福島町と同病院を往復する患者用の送迎バスを運行している。「3億円を超す赤字を解消するには、より多くの患者に来てもらわなければならない」(同病院)と、診療所しかない福島町の了解を得て、隣町の住民を送迎している。同病院によると、赤字は徐々に減っており、経営は改善に向かっているという。

 ■地方へ医師派遣

 道は昨年6月に地域医師確保推進室を設置し、医師を採用して地方に派遣している。これまでに7人を採用し、4病院に派遣した。今年6月からは道病院協会などと協力し、民間病院の医師の地方派遣も開始した。すでに13医療機関に対し、非常勤医師を延べ336日間派遣している。

(おわり)

(この連載は瀬畠義孝、森井雄一が担当しました)

2008年11月30日  読売新聞)
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