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崕山入山制限10年植生回復の傾向…ボランティア 林道監視![]() 岩見沢支局・上地睦
芦別市の崕山(きりぎしやま)(1066メートル)が、全国でも例のない山全体の入山制限を始めてから10年目を迎えた。希少な植物を守ろうという目的通り、植生は回復傾向にある。だが、復活した植物はまだまだ少なく、自然破壊の代償の大きさを見せつけている。 ■林道整備で「荒廃」 「40年ぐらい前は、足の踏み場もないほど花が咲いていたんですよ」――。崕山自然保護協議会会長の山岡桂司さん(70)は、花の楽園だった山の風景を鮮明に覚えている。当時は国道や林道がなく、登頂に何日もかかり、入山者もほとんどいなかった。国道452号が整備され、国道から山すそに向かう林道が延びると入山者が増えた。高山植物が踏み荒らされ、持ち去られた。 1980年代には、見つかった時に備えて猟銃を携帯してまで植物を盗みに来る者が現れた。92年、この山固有の高山植物キリギシソウが大量に持ち去られる被害も発生。かつて山ほどあった希少植物ホテイアツモリも見られなくなった。 ■無期限延長 入山制限のきっかけは、北海道営林局(当時)が98年、芦別市にアツモリソウの保護・増殖事業への協力を呼びかけたことだった。芦別山岳会長だった山岡さんらは「増殖事業だけでは手ぬるい」と主張。営林局も巻き込んだ崕山自然保護協議会の設立にこぎ着け、99年春、山全体の入山制限に踏み切った。植生を回復させようとの試みだ。 北海道森林管理局空知森林管理署によると、世界自然遺産・白神山地のように一部地域での立ち入り制限はあるが、山全体の制限は崕山が初めて。当初、登山者らの批判もあったが、今では理解されるようになった。入山制限は当初5年間の予定だったが、2004年、無期限延長された。 現在、山へ向かう2本の林道には施錠したゲートが設置され、地元ボランティアらが監視を続けている。 ■35種超の花確認 一般の人が入山できるのは、毎夏行われる「モニター登山」の時だけだ。入山制限を始めた99年に始まった。自然保護の大切さを知ってもらおうという趣旨で、申込者から抽選で選ばれた参加者には、自然保護に関する作文の提出と研修会の受講が義務付けられる。 10年近くたって、植生に回復傾向が見られるようになった。ホテイアツモリも確認された。実際、6月15日のモニター登山ではホテイアツモリのほか、アズマギクなど35種を超す花が確認され、道内外から参加した24人をほっとさせた。 しかし、かつてのような花の群落は再生していない。「完全復活」にはまだ相当の年月がかかりそうだ。」 ◇「利用より保護優先」…40年近く崕山で植物調査を続けている北海学園大工学部生物研究室の佐藤謙教授の話 10年間も山を閉鎖しても花が増えないと失望してしまうのが、一般の人の感覚だろう。しかし、自然の中で一つの花を咲かせるには、長大な時間がかかる。人はそんな花々を、20年という短期間で簡単に壊した。 道内では夕張岳やアポイ岳など、各地で高山植物を守る取り組みがある。どんな対策が正解かは分からない。崕山は小さく、狭い範囲に花が集中しているため、入山制限が必要だった。制限していなかったら、崕山の花は全滅していただろう。 登山を楽しむなど、自然を壊さずに利用できる山もある。重要なのは、自然を保護した上で利用するという考え方だ。決して利用を優先してはならない。なぜ、入山制限が必要となったのか。なぜ自然が壊されたのか。一人でも多くの人に考えてほしい。 【崕山】 夕張山地の東北部に位置する、石灰岩の岩峰を特徴とする小さな山。キリギシソウやホテイアツモリ、キバナノアツモリソウなど約350種の植物が確認されている。 (2008年9月29日 読売新聞)
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