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新たな「知」創出 重要


柿沼博彦・JR北海道副社長

 「新幹線を開発したのは誰か」と問われれば、新幹線の生みの親として知られている、旧国鉄の技術者・島秀雄さんとの答えが返ってくるだろう。しかし、実際は、新幹線という巨大なシステムを一人で作り上げることは不可能である。新幹線は多くの技術者の英知を結集して完成したものだからである。

 革新的な技術は、科学技術の発明や発見から始まる。そのためには「発明や発見のできる人材」「発明や発見を活用して社会・経済的価値に結びつける人材」が必要となる。その上、技術として確立するためには「問題を発見して解決に導く人材」も重要だ。加えて、技術を形にするための「卓越した技術者」がいて、初めて技術は世に出ることになる。

 革新的な技術が生まれるには二つのプロセスが重要である。一つは、個々人の持つ技術力やノウハウ、暗黙知をぶつけあって新たな「知」を生み出すことだ。もうひとつは、その「知」を体系化する能力を持った強力なリーダーを輩出することだ。リーダーは個々人の技術力やノウハウ、暗黙知を最大限に引き出すとともに、自らも豊かな知識を持っていなければならない。

 新幹線の技術は、プロジェクトに参加した研究者や技術者、メーカーなど多くの人々の知識やノウハウがぶつかりあった結果、新たな技術となって生まれた。そして、島さんという卓越した技術者の頭の中を通り抜けて体系化された。その意味において「新幹線は島さんが作った」と言える。

 JR北海道では現在、線路と道路の両方を走行できるデュアル・モード・ビークル(DMV)の開発を進めている。今後、この技術を実用化していくためには、開発に参加している一人一人の技術力やノウハウという知識をぶつけ合い、せめぎあいながら新たな技術を創出していかなければならない。

 互いの知識をぶつけ合い、せめぎあって新たな「知」を生み出さなければならないのは、多様性の時代と言われる現在にあって、何も革新的な技術だけに限られる訳ではないだろう。

 めまぐるしく変化する社会・経済情勢の中で、生き延びていくためには、多くの分野で互いの知識をぶつけ合い、せめぎあって新たな「知」を生み出すことが求められている。

 その際には、いささかの駆け引きも必要ないことは言うまでもない。

2009年1月31日  読売新聞)
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