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100年に1度の人材育成


柿沼博彦・JR北海道副社長

 100年に1度といわれている経済不況の影響を受けて、今年も大学・高校などの卒業生にとっては、厳しい就職戦線が待ちかまえている。マスコミなどで報道されるたびに彼らの真剣な様子がうかがえる。かたや、このような厳しい時代には、企業側は、当然ながら即戦力になる人材を求める傾向にある。

 過日、昨年度入社した社員の論文発表会を聞くチャンスがあった。それぞれが立派な発表で頼もしい限りであったが、テーマのほとんどは、入社10年以上のベテランが取り組むようなものであって、入社1年の社員には重く難しいものと感じた。

 やはり、新入社員に期待したいのは、職場や会社を若い新鮮な目で見ることである。「どうしてこんなことをしているの? どうしてこんな面倒なことをしなければならないのか! こんなことでいいのか?」といった職場や会社の問題点を見つけだす「問題発見力」である。自らが問題意識を持って、職場の中の疑問点を先輩や上司にぶつけ、侃侃諤諤(かんかんがくがく)のせめぎあい、あえぎあいの議論をすることである。

 それに対し、先輩や上司も新入社員の疑問に素直に耳を傾けることだ。いやしくも「昔からやっていることだ。生意気なことを言わないで俺の言うとおりにやれ!」などの言葉は禁物だ。会社幹部が一番知りたいのは、そのテーマを選んだ着眼点と問題発見のプロセスである。

 テーマを解決する「課題解決力」とは、自らが今までに習得してきた知識・経験と、職場での先輩や上司の豊かなノウハウ、暗黙知などを活用して解決することである。その結論は一筋縄ではいかないだろう。結果を急ぐより、解決の考え方、手順が大切である。会社の方針にのっとり、先輩の指導を受けながら、じっくり取り組むことだ。

 問題意識を持たず、問題発見が十分にできないまま結果を急ごうとすれば、現状の仕事の仕組みややり方を前提にしながらテーマを発見しようと試みることになる。それは既に会社の仕事を是認した、マニュアル人間のやることである。それではせっかくの若者の新鮮な感覚が取り入れられず、会社にとってもマイナスである。100年に1度の厳しい経営環境は、100年に1度の人材育成のチャンスでもある。人材こそ「最大の資源」であることを肝に銘じ、じっくり若い社員の人材教育をすることだ。

2009年7月31日  読売新聞)
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