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騎手も 馬主も 調教師も<6>やれることは何でもやる
川崎市から夫婦で参加した吉年康子さん(37)は、「コース横を厩務(きゅうむ)員が伴走しながら馬を励ましたり、障害を登り切った最後の1頭に場内から拍手がわくのを見てジーンとしました」と語る。 インターネット、電話による投票や場外発売所の拡大に努めている北海道市営競馬組合にとって、ツアー誘致は新規ファン獲得の重要なステップだ。組合管理者の菅原功一旭川市長も駆けつけ、「ばんえいは奥深い。私も昔1度だけ大もうけしたことがある」とPRした。 不景気、ファンの高齢化、趣味の多様化――。地方競馬を取り巻く環境は厳しい。この5年で全国の7競馬場が廃止された。ばんえいも昨年度の馬券発売額はピーク時(1991年度、322億円)の5割に満たない144億円。7年連続赤字で累積赤字は24億円。再建5か年計画初年度の今年度、もし赤字額がかさめば、廃止や縮小が現実味を帯びてくる。 調教師と騎手で作る調騎会会長の服部義幸調教師(58)は、5月末に東京で開かれた全国公営競馬調教師会連合会総会に出席した際、廃止が濃厚な地方競馬の調教師たちの真っ青な顔に衝撃を受けた。「わらにもすがる思いがにじみ出ていた。ああいう思いは決してしたくない」と語る。 調騎会は2年前に広報委員会を作り、ばん馬の繁華街パレードや小学校訪問を実施、地元住民への浸透を図っている。「これまで、我々一人一人が経営に参加する気持ちが足りなかった。やれることはがむしゃらに何でもやる」 馬主も同じだ。この日、初企画された「オーナーズカップ」。馬主自らが愛馬の騎手を務め模擬レースを実施、勝ち馬を当てたファンに焼き肉パックを贈った。優勝したのは、19連勝記録を持つ名馬サカノタイソン(引退)の馬主だった旭川市の大阪武さん(67)。「みんな予想以上に喜んでくれた」と顔をほころばせた。 組合職員、調教師、騎手、生産者、馬主など1500人を超す人々の生活を支えるばんえい競馬。かつてない危機感が、関係者の結束を生んでいる。 昨年春に発足した「ばんえいファンクラブ」顧問の古林英一・北海学園大教授(46)は「ばんえい競馬は、観光、文化資源として将来的に十分活用しうる資産。短絡的な判断で灯を消してはならない」と話し、認知度の低い札幌圏でのシンポジウム開催などを提案する。 勝負を決める第2障害の登坂。騎手が手綱を強く引くと、馬は1歩下がってから反動をつけて渾身(こんしん)の力で坂を駆け上がる。「ストップ・アンド・ゴー」。ばんえい競馬も勝負の坂に挑もうとしている。(おわり) (この連載は諏訪泉が担当しました)
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