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茶道の静寂とゆとり

イラスト・まさやようこ

 今年5月、盛岡市内丸の桜山神社の例大祭に合わせて開かれた「大福茶会」を取材した。神社本殿の大広間では、「江戸千家岩手不白会」の会員が立てたお茶を、参拝に訪れた人たちが、直径30センチほどもある大きなおわんを回しながら味わっていた。「大きなおわんでお茶をたてると、まろやかな味になるんです」。お点前を披露する弟子たちの様子を見に来た同会の名誉会長・三田明子さん(91)が教えてくれた。

 「江戸千家」は、南部藩の藩主が参勤交代の際に江戸から持ち帰った茶道の流派だという。そう説明してくれた三田さんの気品に満ちた立ち居振る舞いに、茶道の心得などまったくない私でも、引き込まれるように見入ってしまった。

 「お気に召したようでしたら、一度、茶会にいらしてみてください」。三田さんの言葉に二つ返事でうなずいてしまった。

 三田さんは学校法人「岩手女子奨学会」の名誉理事長として、現在も岩手女子高と岩手看護短大の経営に携わっているだけでなく、同高では「日本伝統文化」の授業を受け持っている。「礼法を身に着けることは一生のパスポートになる」と、高校生たちにふすまの開け方やあいさつの仕方などの礼儀作法を教えている。

 大福茶会の翌月、お言葉に甘えて、三田さんが自宅で週2回開いている茶道教室にお邪魔した。作法もわからず、冷や汗の連続だったのに加え、慣れない正座に足がしびれ、とても無心の境地とまではいかなかった。

 それでも茶室の中を流れる、静かでゆっくりとした時間に、言いようのない心地よさを感じた。4月に盛岡に配属されたばかりの新人記者として、昼も夜もなく駆け回る日々を送っていただけに、なおさらそう感じたのかもしれない。

 先月からは毎週のように教室に通うようになった。足のしびれには今も悩まされているが、少しずつでも盛岡の地になじんできているのかなと思っている。(吉田拓矢)

2008年12月29日  読売新聞)
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