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【いわて寸言】大村友紀美 歩いて知る 町のぬくもり

 人によって旅のスタイルはさまざまだ。わたしは、その土地をできる限り歩くのが好きである。歩く速度ならではの発見がある。

 裏路地の人家、道端に生えている樹木と草木、土地の匂い、商店の店先に並ぶ品々など、なにげない風景の中に、そこで暮らす人々の息吹と生活感を感じ取ることができるからである。そして、岩手で生まれたけれど、実は岩手のことをよく知らないということを、歩きながら気付かされることも多い。

 「平泉を観光した後は、花巻温泉に宿泊する方が多くて、ここは素通りなんです」。奥州市水沢区を歩いた時、奥州市武家住宅資料館でそんな話を聞いた。郊外に国道やバイパスが走り、市の中心部を通らなくなっていることもあるだろう。かつての城下町の風情が残る水沢界隈(かいわい)を見ることなく通り過ぎてしまうのは、もったいないと思った。

 県内を紹介する観光ガイドブックを見ると、市町村合併により、一つの自治体として取り上げられず、紹介スペースが削られた旧町村も少なくないことに気付く。先日、一関市千厩町を巡るバスツアーに参加したが、町のボランティアガイドさんの案内のおかげで、ガイドブックには載っていない千厩町の歴史などの知識と町で暮らす人たちの生の声を聞くことができ、楽しい時間を過ごすことができた。

 徒歩での案内で、明治から大正時代の建造物である横屋酒造・旧佐藤家住宅こと「酒のくら交流施設」を始めに、町を散策していると、昔ながらの蔵が多く残されているのに気付く。千厩町にこのような景観が残されているのを、歩かなければわからなかっただろう。

 旅の楽しみの一つは、その土地の人とのふれあいでもあるが、「人が来てくれるのがうれしい」とボランティアガイドさんは話した。その笑顔から、旅人を心から歓迎しようとするサービス精神と、町を愛し、「町に来てほしい」という熱意を感じた。喧騒(けんそう)とは対極にある閑静な町で、ボランティアガイドさんたちは、町を盛り上げようとしている。

 地域を盛り上げるのも、その土地に住む人の気持ちと熱意なのだとつくづく思った。また訪れてみたい、そう思わせるなにかが旅の余韻として心に残った。

 この秋、「安・近・短」の旅で、岩手を楽しむのもいい。県内にあるかつての城下町や宿場町などを散策するだけでも、知らない岩手の姿が見えてくる。ふとそんなことを思った。

2008年9月24日  読売新聞)
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