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[第2部 「日本一」を訪ねる]

(21)手間と愛情結実…富山・入善町


巨大なスイカがずらりと並ぶ品質査定会(2006年7月、入善町で。JAみな穂提供)

 一抱えもあるスイカにざっくりと包丁を入れる。赤い果肉を見せて半球がごろんと転がり、甘い香りが漂う。子供のころ、持ち上げられないほどの重さに驚き、大きければ大きいほど、切り分けてもらうのがワクワクと楽しみだった。

食用最大・高級スイカ

 スーパーなどで普通に見るスイカは1個7、8キロ。5Lサイズと呼ばれる大玉は10キロを超えるが、20キロ近い「日本一大きいスイカ」を作っている町があるという。「入善ジャンボ西瓜(すいか)」。入善町のJAみな穂が特許庁に出願していた地域団体商標登録が今年2月認められた。

 重さだけなら、秋田県の「ジャンボスイカコンクール」や熊本県の品評会などで100キロ以上のスイカが出品されている。だが、甘みが薄く食べるのにはあまり適さない。「入善町のスイカが“日本一”なのは、贈答用の高級品として全国へ出荷するなど、産地として確立しているからなのです」と、同JA営農指導員の滝本聖久(きよひさ)さん(36)が誇らし気に教えてくれた。

 入善町のある黒部川扇状地は水はけが良く、室町時代からスイカ栽培が行われていた。明治中期、より甘いものをと品種改良が盛んになり、大型で楕円(だえん)形の実をつける米国産「ラットルスネーク種」が最も土壌に適していることがわかった。1897年(明治30年)から生産が始まり、黒部西瓜と名付けられて、大正期には作付面積は96ヘクタールに達し、ロシアや韓国へ輸出されるまでになった。

20キロ超の大物も


JR入善駅に飾られているジャンボスイカの模型。傷まないよう「さん俵」で挟んで出荷される

 戦後、ほかの産地に押されて作付面積が激減したものの、特産品に育て上げようと、1982年に農家が「入善町ジャンボスイカ生産組合」を設立。皮が薄くて甘みのある品種の開発や生産手法の確立に努めてきた。今年の作付面積は約8ヘクタール、22戸の農家が3万個の出荷を予定している。

 重さ30キロを超えるものを出荷した時もあったが、現在は、甘さと大きさを調整し、直径約30センチで15〜18キロ前後。それでも2005年には28キロの大物が出た。「これだけ大きなものがスイカ割りやキャンプで登場すれば、盛り上がること間違いなし。味はもちろんだが、見るだけで驚き、喜んでもらえるものは、ほかにないのではないか」と滝本さんはいう。

 スイカ生産歴50年の同組合長・中瀬昭義さん(68)の畑を訪ねると、苗を植え終わり、虫がつかないよう、わらを敷く作業の真っ最中だった。

 大きく育てるには、いくつかポイントがある。一度収穫した畑は10年間は使用しない、他品種のスイカのように接ぎ木をせず種から栽培する――。中でも大切なのは、一つの実に栄養が集中するよう、余分な芽を摘む作業。兼業農家だった中瀬さんは、朝5時起きで畑に行き、勤めの後、夜9時ごろまでまた畑作業に追われた。「子供に『家で親の顔を全然見ない』と作文に書かれたこともあった」と振り返る。「でも、スイカは子供と同じ。20キロ超えを期待して、はかりに乗せる瞬間が何よりもうれしい」と、真っ黒に日焼けした顔をほころばせる。

 滝本さんは「夕張メロンと肩を並べるブランドにしたい」と、首都圏での試食会などにも積極的に取り組むつもりだ。

 間近に見える北アルプス連峰。その雪解け水が黒部川に流れ込み、スイカ畑を潤していく。大自然にはぐくまれて大きく育ったスイカを、ぜひ味わってみたいと思った。(吉良敦岐)

 ジャンボスイカコンクール 秋田県横手市では毎年、JA秋田ふるさとの品評会が開かれる。出品されるスイカの品種は飼料用の米国産「カロライナクロス」で、糖度は10度以下(一般のスイカは約12度)。これまでの最大記録は133.1キロ。

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2007年6月7日  読売新聞)
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