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[第2部 「日本一」を訪ねる]

(64)色よし形よし 高級金魚…愛知県・弥富市


「弥富の金魚は日本一です」と話す伊藤さん(愛知県弥富市で)

 愛知県弥富市は金魚の売上高日本一を自任する。昨年は約8億円に上った。祭りで定番の金魚すくいは、今も昔も子供たちに人気だ。そんな懐かしい思いを抱き、「泳ぐ宝石」のふるさとを訪ねた。

 「丁マル(500円)」「天リ(620円)」――。4月18日、弥富市前ケ須町の日本金魚卸売市場に、全国から集まった仲買業者たちの威勢の良い声が響いた。競りで飛び交うのは「1」を千、「2」をリなどと言い換える独特の掛け声だ。毎週金曜日に開かれる競りでは平均40万〜50万匹の金魚が取引される。

品評会で50万円

 「弥富の金魚は形も色も日本一です」と話すのは、弥富金魚漁業協同組合の伊藤恵造組合長(55)。弥富市は生産量では約3100万匹(2007年)と奈良県大和郡山市(約7000万匹)を下回るものの、高級金魚を中心に売り上げを伸ばす。伊藤さんも今年4月に東京都江戸川区で開かれた品評会にアズマニシキを出品し優勝、50万円の高値が付いた。

 金魚は同じ種類でも泳ぎ方や大きさなどによって値段は大きく変わる。高く売れる重要なポイントが色合いで、伊藤さんは「オレンジより赤い方が価値が高い。弥富の土は鉄分を多く含んでおり、その土を掘った養殖池で育つ金魚は赤くなりやすいんです」と説明する。

 弥富の金魚の歴史は江戸後期にさかのぼる。大和郡山から運んできた業者が金魚を一時休める池をこの地に作ったのが始まりとされ、明治初期に孵化(ふか)事業が本格化したという。

 金魚の生育には水の豊富な地域が適しているが、弥富市歴史民俗資料館学芸員の伊藤隆彦さん(43)は「木曽川の支流に囲まれた弥富は昔からの水郷地帯。農家は自宅から田んぼに舟で移動していたくらいです」と自慢する。

6匹 宇宙実験に


向井千秋さんと宇宙へ行った金魚と同種類の子孫

 1970年代になると、国の減反(生産調整)政策により、水田をつぶして金魚養殖に転業する農家が増え、76年には320業者を数えるなど金魚の一大生産地となった。

 94年には、宇宙飛行士向井千秋さんとスペースシャトル「コロンビア」に、弥富で品種改良されたワキン6匹が同乗した。人と金魚は耳の構造が似ているため、宇宙酔いの謎を解く実験に使われた。

 そんな弥富の金魚に魅せられ、金魚の歌を作った人もいる。岐阜県各務原市でサックス奏者やラジオDJとして活動する小島勇司さん(28)は、弥富市のホームページで市のキャラクター「きんちゃん」を見つけた。「こんなかわいいキャラクターにテーマソングがあればもっといい」と、昨年10月、イメージソング「近所の金魚は弥富のきんちゃん」を作詞作曲した。

 弥富市も地元に愛着を持ってもらおうと、市内の保育園や小学校に配布した。各保育園では毎朝、それぞれ考えた振り付けで歌っているといい、村瀬美樹・人事秘書課長(49)は「口ずさみやすい歌で、聴いたらすぐ覚えられる。せっかくの特産品を武器に弥富の名前をPRしていきたい」と意気込む。

 日本人の原風景とも言える金魚。色とりどりの姿を見ていると、遠い記憶がよみがえってくる気がした。(板垣茂良)

 金魚 原産地は中国。フナが突然変異して体の色が赤くなったのが始まりと言われている。中国から日本に入ってきたのは室町時代の終わりごろとされる。雑食性。100種類以上の品種がある。

《日本で生産される主な金魚》
ワキン 中国から日本に最初に伝来した。体形がフナのように細長く尾ひれが短い
リュウキン 18世紀に琉球から薩摩へ輸入されたことからその名が付いた。体長が短く頭が小さい
デメキン 目が突きだしているのが特徴。明治時代に中国から伝来した
オランダシシガシラ 頭のこぶが特徴。江戸時代に伝来した。当時、舶来の珍しいものをオランダと呼んだことに由来
ランチュウ 体形が丸く、背びれがないのが特徴。ワキンから生まれた品種
トサキン 高知市を中心に生産された。ランチュウとリュウキンの交配により生まれた品種
(弥富市歴史民俗資料館のデータを基に作成)

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2008年5月15日  読売新聞)
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