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<2>もろみ、しょうゆで仕込む◆若手職人、1年かけ新製品店頭にずらりと並ぶかめとおけ。中に入っているのは、鏡のように光るしょうゆと黄金色のみそ。鹿児島市西田の「吉永醸造店」は創業1928年(昭和3年)以来、しょうゆとみその量り売りを続けている。今では珍しくなった光景に観光客が足を止め、近所の主婦が空の一升瓶を抱えて来る。たちまち店内は愛用者の歓声と甘く香ばしい香りでいっぱいになる。 「1年かかりました」 製造を担当する専務取締役の吉永広記さん(30)は、さしみしょうゆ「薩摩の雫」(300ミリ・リットル、472円)を誇らしげに見つめる。もろみを仕込む際に水の代わりにしょうゆで仕込み、ふくよかな甘味が魅力。さしみにはもちろん、煮物の隠し味としても重宝する“作品”で、吉永さんが開発した商品第1号だ。 吉永さんは2003年9月、家業を継ぐために3年半の行員生活に別れを告げた。紙幣を数える手を櫂(かい)棒に変えての修業を始めた。「銀行員も職人もお客さんの笑顔が最大の喜び」。都内の大学に進学し、県外勤務を経験した分、実家のしょうゆの甘い味と香りには敏感だ。それでも「造り手になって初めて、その重厚な甘みや質の高さを知りました」と振り返る。 「技は見て盗め」という父・亨さん(65)の方針で、発酵食品のテキストを熟読しながら、しょうゆ造りを体で覚えた。気温や湿度に応じて製品の管理方法を変えたり、材料の配分を微調整したりして、行員生活では味わえなかったものづくりの喜びと充実感をかみしめている。 「ゴオォ」――。店頭奥の工場で響く低い音。しょうゆの味付け作業「火入れ」中のタンクをのぞきこむと、湯気の向こうに黒光りする液体が小刻みに揺れている。その横では、瓶詰めやラベル貼りが行われ、従業員があわただしく行き交う。 「仕事や進学で鹿児島を離れた人が、吉永しょうゆ以外は口に合わないから送ってほしいと注文が入るたび、最高の1本を造らなくちゃと身が引き締まる思い」と吉永さん。夢は昔ながらの製法で手間暇をかけ、客の需要に敏感に対応すること。「ふるさとの香りはしょうゆの香り。郷土のしょうゆを未来に伝えるため、修業は一生続きそうです」と新米職人は額の汗をぬぐった。 (2008年1月5日 読売新聞)
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