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(5)大統領の祝辞は幻に

使節団は文化交流したが・・・

「50周年に祝辞申し上げます。私は姉妹都市を支え、参加されている方を称賛します。この取り組みは、地球規模の友好を前進させる我が国の歓迎精神のかがみです」

ブッシュ大統領から贈られた祝辞。文末にブッシュ大統領のサインが書かれている(サンディエゴ市で)‖金子靖志撮影

 サンディエゴと横浜の姉妹都市50周年式典の中止。ブッシュ大統領の祝辞は幻になった。

 姉妹都市は、第34代アイゼンハワー大統領が提唱した米国生まれの市民交流。全米各地で盛んな取り組みだ。式典の実行委員長カネコ・オオシマ・ビショップさん(77)は日本で生まれ、サンディエゴに暮らす。

 「大統領も私たちの交流に敬意を払っている。市民団体への大統領の祝辞はレアケース。大統領にも式典がなぜ中止になったのか、報告しなくては」

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 サンディエゴ市内の公立小学校教諭の女性(36)は、歴史の授業で横浜との姉妹都市交流を取り上げた。

 「『横浜との姉妹都市は今年で50周年になるの』と子供たちに教えたばかり。子供たちは、横浜がどんな都市か興味津々。地図を広げて、指で差して喜んでいた。『サンディエゴと同じで港があって、きれいな所』と説明すると、みんな目を輝かせていた」と話した。

 式典が直前に中止となったことに「姉妹都市が50年も続いたことに誇りを感じている。だから、横浜をあまり悪く思いたくないけど、非常に残念」と顔をしかめた。

 サンディエゴ市民の多くは、西海岸で最も歴史のある横浜との交流を、大統領と同じく「リスペクト(尊敬)」「プラウド(誇り)」という言葉で表現した。

 ビショップさんら市民ボランティアは、「誇り」をもって式典の準備を進めていた。

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 式典には横浜から中田宏市長をはじめ、市議や市民らからなる友好使節団が出席することになっていた。

 使節団は、横浜・サンディエゴ友好委員会の37人と、伝統芸能を披露するため公募で選ばれた37人の計74人。中田市長が欠席し、式典は中止となったが、使節団は派遣された。

 式典が行われるはずだった10月28日の前日、コンベンションセンターで文化交流会が開かれた。和太鼓に合わせ、獅子がサンディエゴ市のステージで力強く舞った。サンディエゴ市民から拍手が送られたが、空席が目立った。

 獅子舞を演じた岸根囃子(ばやし)連中の伊藤武夫さん(64)は「ちょっとさみしいな。これも山火事のせいだろう……」とその時、感じた。

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 伊藤さんは出発2日前、山火事を知り「そんな所へ行っていいのか」と心配になった。旅行会社に問い合わせると「サンディエゴ市が『こういう時だからこそ励ましてほしい』と言っている」と伝えられた。「お祝いの言葉を、お見舞いに代えないと」と仲間と話しながら向かった。

 使節団は交流会の翌日、ビショップさんの案内で、植樹式が行われるはずだった友好の鐘を視察し、昼食会に出席した。「皆さんに申し訳ない」。ビショップさんは泣き声だった。

 伊藤さんは「友好の鐘を見に行ったが、わびしかった。サンディエゴの都合だから仕方がないと思っていた」とため息をつく。

 横浜の使節団は結団式で「山火事でサンディエゴ市から式典を自粛したいという知らせがあった。中田市長の訪問を見合わせる」と市国際政策室から説明を受けたという。

 なぜ、式典が消えたのか――。使節団の心に澱(おり)のように、疑問がたまっていった。

2007年12月18日  読売新聞)
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