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女性交通整理員 (上)街に似合う優しい案内人
明るい黄色のコートに身を包んだ若い女性の声が元町の空に響く。途切れることのない人の波と、それを横切る車を見事なばかりにさばいていく。元町商店街で通りの真ん中に立ってきびきびと交通整理をし、優しく道案内する彼女たちの姿は、今や元町には欠かせないものの一つになった。 横浜トラッド、俗に“ハマトラ”と呼ばれるブームで人が押し寄せた一九八〇年代前半、交通整理をしていたのは、ごく普通の男性警備員だった。それを女子大生に任せるというアイデアを打ち出したのが、イベント企画会社「ハッスル」(横浜市中区)の社長、小島寛(43)だ。一九八六年、当時二十五歳。奇抜なアイデアは、小島自身の人生も変えることになった。 ◇ ◇ 小島は横浜生まれの横浜育ち。学生時代、横浜どんたく(現在の横浜開港祭の前身)でイベントの手伝いをして、企画することの面白さを知った。「真っ白い紙に描いた絵が、形になる。自分の描いたアイデアで、人が踊ったり歌ったりする」。それは、「いつかイベント会社を起こしたい」という夢になった。 ちょうど同じころ、「元町SS会」の宣伝部長をしていた宝田良一(56)は、知人から言われたことが、頭から離れずにいた。「男性警備員じゃ、元町の雰囲気に合わない」 元町を訪れる客の約八割は女性。「ご婦人の街だから、警備も女性にお願いした方がいい」。そう思い、いくつかの警備会社を訪ね歩いてはみたが、当時、まだ女性を警備員にするという会社はどこにもなかった。 「元町で仕事をしてみる気はないか」。宝田は、横浜で開かれるイベントに頻繁に顔を出していた小島にこの話を持ちかけた。小島は、二つ返事で引き受けた。まず、街を知ること。すぐに、元町に足を運び、土日の街に立った。 ◇ ◇ 元町二丁目の交差点に立って通りを見つめているうちに、あることに気付いた。「山下公園はどこですか」「中華街へはどう行けばいいの」。通りがかりの人から次々に飛ぶ問いかけに、警備員の男性は不機嫌そうに答える。小島の目には、多くの女性たちでにぎわう元町の真ん中に立つ彼らの姿が不釣り合いに映った。 当時、女子学生のアイドルグループ「おニャン子クラブ」が、テレビで爆発的な人気を呼んでいた。元町のそばには、名門女子大のフェリス女学院大学がある。 「女子大生にやらせてみたらどうだろう」。気が付くと、交差点に立ち続けて三時間が過ぎていた。 元町の風景に欠かせない女性の交通整理員「ライトフェニックス」は、こうして誕生した。 (敬称略)
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