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天然・地場産こだわり<2>

「高知の素朴さを大切にしたい」と話す横山社長。客との会話に笑顔が絶えない(高知市愛宕町の横山製麩所で)

 店ののれんをくぐると、外の喧騒(けんそう)が消え、時間が止まったような静寂が訪れた。創業61年を迎えた高知市愛宕町の横山製麩所(せいふしょ)。棚には様々な商品が並ぶ。麩菓子は、黒糖、ショウガ、ユズ、青ノリ、イチゴ味があり、カラフルな黄色やピンクが目に飛び込んでくる。袋を開けると、飾り気のない香りが辺りを包んだ。生地はキメが細かく、口に入れると、溶けていく感じが心地よい。水は四万十川の源流水。使うイチゴ、ショウガ、ユズ、青ノリはすべて県内産だ。香りと風味を生かすため、香料は一切使用しない。「高知の素朴さにこだわりたいから」。横山明社長(59)が大切にしている思いだ。

 焼き麩の専門店として、先代が始めた製麩所を大学卒業後に継いだ。商品開発に力を入れ、生麩や麩饅頭(まんじゅう)、麩菓子など「正確にはわからないが、50種類以上はある」と胸を張る。

 しかし、県内での売れ行きは好調だったが、県外に販路を広げるのは難しかった。全国の物産展に赴いても、経費が売り上げを上回るほどだった。その時、物があふれる世の中で、「地元のものを使い、こだわりを持って作らないと売れない」との思いを強くした。

 まず見直したのが原材料。仕込み水を、水道水から、知人を頼りに見つけた四万十川源流点のある津野町の不入山(いらずやま)の水に替えた。ユズ、ショウガなど全国に誇れる県の特産品にも目を付けた。若者に人気があるイチゴ味の麩菓子に使っているイチゴは3年前、妻のフミ子さん(59)が教えてくれた。漢方農薬などで育てた香美市香北町のイチゴのおいしさに、すぐに決断。味だけでなく、色も2種類をミキサーにかけて絶妙な赤みを出している。

 素材をストレートに生かすのもこだわりの一つ。香料を使えば強い風味に簡単に仕上げられ、コストも抑えられるが、「何のために県外に出すのか。意味がない」と天然物しか使わない。高知の素朴さ、素材の良さを最大限に生かすためだ。熱加減や包装方法の研究を重ね、天然の風味にこだわり抜いた。

 その一方で、柔軟性も忘れない。イチゴは、収穫時期によって酸味が違うことに気付くと、2、3月の甘いイチゴを果汁にして冷凍し、5、6月の酸味の強いイチゴに混ぜることを考案中。試行錯誤を重ねている。

 販売方法も、柔軟に対応する。50歳を過ぎてからインターネットのホームページ作成に挑戦。講習会に足を運び、栄養分析や、客のコメントを載せるなど内容を充実させ、販路拡大の足がかりをつかんだ。今では、関東からの注文が最も多いという。

 豊富な食資源があるが、生かし切れていないのが県の現状と分析し、「県外に出荷して、“外貨”を稼がないと生き残れない」と説く。「地元産にこだわることで、農家、加工者ら、県内でお金が回る。長期的に持続できる仕組みを作り、県外に売り込みたい」。県内で唯一の麩専門店が、地元産品で仕上げた麩菓子を通して、活気あふれる高知の実現に夢を膨らませている。(島田喜行)

横山製麩所

(電)088・872・3670

2009年1月3日  読売新聞)
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