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(5)被災地の今 撮り続ける偶然の1枚 復興の道しるべに地震の揺れは大きかったが、大崎市にある自宅周辺には被害はなさそうだ。笠原昭夫(48)は予定通り、栗原市花山地区の妻の実家に車で向かった。 途中、立ち入り禁止もされていなかったので、そのまま花山に入った。消防車が行き交い、大きなカメラを抱えた報道陣が走る。車を止め、外に出た。余震で足元から揺れた。 約8年前から栽培しているキノコを撮影するために持っていたデジタルカメラを、カバンの中から取り出し、道をふさぐ大木に向けた。シャッターを切った〈その時〉、笠原と地震との付き合いが始まった。 ◎ 失業中だった笠原にとって、花山は心安らぐ場所だった。職探しの合間に訪れては、農作業を手伝った。 その花山が変わり果てていた。地割れした道路、むき出しの山肌……。写真が趣味というわけではなかったが、とりつかれたように撮り続けた。地震直後の現場を撮った写真は珍しい。数枚の写真を選び、地域の新聞社に持ち込むと、昨年7月に写真集として出版された。 仮設住宅に避難した花山の全住民に配った。地震の恐怖を思い出すのか、涙を浮かべる住民もいた。被害の深さを改めて知らされた。 栗駒山で行方不明となった、山形県の夫婦の姉からも写真集の注文があった。道路がふさがったため近づけず、行方不明になったとされる現場は上空からしか見ていない。「少しでも近い場所を見てみたい」 写真集といっても、素人写真。構図も甘く、平凡と思うが、被写体に心を揺り動かす力があった。地震直後を撮影した者として、撮り続ける責任を感じるようになった。 妻の両親が一時帰宅するたびに同行した。天井が落ち、散らかった部屋を片づけ、農作業を手伝う合間に、地域を撮影して回った。 地震直後に撮った場所を、日時をおいて撮影を繰り返し、1年前の写真と見比べる。倒れた木や壊れた家はそのままで、田んぼにはまだ濁流が渦巻く。しかし、温泉旅館では復旧工事が進み、道路の亀裂も修復された。土砂崩れの個所は、撤去作業が進む。花山の「今」を伝えたいと、12月頃から、インターネットにブログを立ち上げ、写真の掲載を始めた。 今月6日は田植えの予定だったが、あいにくの大雨。代わりに、裏山にキノコを見に行った。キノコは大きくなり、数も増えていた。ブログに載せるため、カメラを向けると、シャッターの乾いた音が雨音と重なった。愛する花山の写真が、また1枚増えた。 5月に再就職したが、花山にはずっと通い続けるつもりだ。 (文中敬称略、林理恵 写真も) (2009年6月13日 読売新聞)
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