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ブランド戦略失敗響く 山形(2004/9/12)

写真:写真説明
「はえぬき」のロゴが入ったユニホームを着て試合に臨むモンテディオ山形の選手(山形県天童市の県総合運動公園陸上競技場で)
 ■□□ブランド力

 全国で約一万店を展開する「セブン―イレブン」(本社・東京都)が、一年間に販売するおにぎりは十億四千万個。その多くに山形県産の「はえぬき」が使われていることは、ほとんど知られていない。ラベルには一切、「はえぬき」の文字がないからだ。

 採用された二〇〇一年秋、全農山形県本部の担当者は東京都内で、納入する卸業者と意見交換した。全農の担当者は「はえぬきと表示して欲しい」と繰り返したが、卸業者は「ブランドを出さないのがセブン―イレブンの戦略」と断った。ところが翌年、セブン―イレブンが売り出した高級おにぎりには「会津産コシヒカリ」の文字が。全農の担当者は「はえぬきは、知名度やブランド力で劣るということなのか」と、悔しがった。

 □■□“鎖国”

 山形県内陸産のはえぬきは、日本穀物検定協会が、ほかには「魚沼産コシヒカリ」のみという十年連続の「特A」の折り紙を付ける。

 失敗は“鎖国政策”にあった。県農業試験場が開発、一九九二年に作付けが始まったはえぬきは、「あきたこまち」などの新ブランド米ブームに乗り遅れた。県は、出遅れの懸念を「独自ブランドとして育てる」ことでぬぐおうと、県外作付けを禁じた。

 ところが、全国的に流通しなければ、知名度も伸びないと気付き、九六年に県外作付けを解禁。さらに、県などはサッカーJ2・モンテディオ山形のユニホームに「はえぬき」とプリント。地元出身の演歌歌手・大泉逸郎さんを起用したCMを首都圏などで流すなど攻勢に出た。

 しかし、四年間の“鎖国”が響き、県外では大分、秋田などで細々と生産されるだけ。全国の流通量は、コシヒカリの十二分の一に過ぎない。県が〇三年九月、全国の消費者を対象に行った米の嗜(し)好(こう)調査で、はえぬきを挙げた消費者は3・9%。コシヒカリの47・6%、あきたこまちの20・6%に大きく水を空けられたままだ。

 □□■品種転換

 全国米穀取引・価格形成センターによると、はえぬきの平均入札価格(二〇〇三年)は玄米六十キロで2万965円。魚沼産コシヒカリより1万3759円も低く、県内産コシヒカリに比べても1132円低い。

 山形市内の農家佐々木譲さん(45)は今年、作付面積で八対二だったはえぬきとコシヒカリの比率を、半々とした。佐々木さんは「経営面を考えるとコシヒカリの方が得だ」と説明する。

 山形農協(山形市)も今年から三年間で、はえぬきの作付け比率を85%から70%にし、コシヒカリを6%から15%に増やす計画だ。佐藤敏明・副主幹は「あくまではえぬきが主力だが、高く売れる米作りをしなければ産地間競争を生き残れない」と悲鳴を上げる。みちのく村山(村山市)、山形おきたま(川西町)の各農協も追随する。

 山形大の楠本雅弘教授(農業経済学)は「県の戦略が失敗した今、ブランド米を目指すのは現実的でない。高品質の値ごろな米として生き残るには、消費者へアピールする努力が必要」と話す。今は生産量の四分の一がセブン―イレブンのおにぎりとなるが、将来的な保証はなく、全国の販路拡大が急務だ。

 全農県本部は、山形大工学部が開発した「はえぬき100%の米粉パン」の試食会を開き、学校給食や専門店への普及を後押しする。農家には、農薬を通常の半分以下に抑えた栽培を呼びかけ、イメージ向上を図る。

 戦略失敗で追い込まれたはえぬきの、新たなアピール作戦は奏功するか――。

【はえぬき】山形県の主力銘柄だったササニシキに代わる新品種として開発された。品種名は一般公募、全国から寄せられた約十一万点から選ばれた。耐冷性が強いため、品質が安定しているのが最大の特徴。二〇〇三年度の生産量は二十四万トンで品種別の順位は七位。全国の市場占有率は約3%、山形県産が94・6%を占める。

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