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(3)避難勧告 (04/8/13)

情報届かず 逃げ遅れ 発令システム構築が急務

 七月十三日午後一時ごろ、三条市南四日町の自宅で昼食を終えた木工業経営佐藤清さん(72)と長男の誠さん(42)は、ひざ近くまで冠水した道路を進み、近くの工場に向かっていた。辺りは低地のため、少しの雨でもすぐに水がたまる。

 この直後、約二キロ離れた五十嵐川の左岸堤防が決壊した。何も知らずに二人が仕事を始めて約四十五分後、濁流が突然、工場を襲った。誠さんは事務所二階に逃げたが、清さんの姿が見当たらない。胸まで水につかって捜したが、工場前の側溝付近が激流と化し、中に入れなかった。

 清さんの遺体は工場の入り口そばで見つかった。タイムカードの機械が午後二時六分で止まっていた。市の避難勧告発令から約二時間半後の悲劇だった。

 誠さんは「市が勧告を出したと言っても、我々は知らなかった。工場は再生できても、父の命は再生できない」と、やりきれない表情で語った。

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 五十嵐川左岸の三条市嵐南(らんなん)地区では九人が死亡した。うち七人は決壊現場から約二―三・五キロ離れた地点で発見された。この付近に濁流が到達したのは、決壊(午後一時七分)から約一時間が経過した午後二時以降とみられる。

 市によると、嵐南地区には午前十時十分、同十一時、同十一時四十分の三回に分けて避難勧告を発令。「自治会長を通じて住民に連絡したほか、広報車三台を巡回させ、地元のFMラジオ局でも避難を呼び掛けた」という。しかし、同地区の自治会長二十四人のうち二十二人は「連絡はなかった」としている。

 市は「豪雨で広報車のアナウンスが聞こえにくく、同報系防災行政無線もなかった。何より想定外の豪雨で混乱してしまった」と釈明した。

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 避難勧告とは、災害が発生または発生する恐れがある場合、住民に立ち退きを勧告する市町村長の権限。だが、発令のタイミングや伝達の方法は、自治体間でかなり格差がある。

 先進的な例は、原発を抱える柏崎市。災害時にサイレンや広報車では聞こえにくいことから、二〇〇一年度に約11億円を投じ、希望する約三万二千の家庭や事業所に無線の受信機を設置した。「同報系防災行政無線」と言われる設備で、市役所四階の制御室から地区別の情報伝達が瞬時にできる。豪雨災害後、約百件の追加申し込みがあった。

 県危機管理防災課によると、同報系無線は津波が予想される沿岸部や豪雪地帯の中山間地では整備が進むが、平野部の市街地では遅れが目立つ。三条市でも、地域防災計画で必要性が指摘されながら設置していなかった。

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 避難勧告の効果を高める試みも各地で行われている。二〇〇〇年の東海豪雨で死者四人を出した名古屋市は、翌〇一年六月から「避難勧告準備情報」の運用を開始した。一定の基準に達した際、勧告の前段階として発令することで「住民と行政が避難を準備する時間を確保できる」という。

 神林村は、大雨に見舞われた七月十七日、村内の約千二百世帯に「避難準備情報」を提供。村の防災計画には盛り込まれていないが、村長と消防団長らの柔軟な判断だった。

 見附市は同十三日、刈谷田川上流のダムの大量放水が決まった直後、一度発令した避難勧告をより強制力の強い「避難指示」に切り替えた。「勧告では住民に刺激が足りない」との判断で、結果的に功を奏した。

 災害時、行政が発令する避難勧告は、情報の乏しい住民にとって「命綱」となる。行政のわずかな判断の誤りが、住民の命を奪うことにもなりかねない。災害情報学会の広井脩会長(東大大学院情報学環教授)は「水害について多くの知識を持つ首長はそういない。一定の基準、情報に基づいて避難勧告を出すシステムの構築が急務だ」と指摘している。

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