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砂浜やがて消滅 (06/6/29)

新潟西港から角田岬 28キロの「広域新潟海岸」 原風景取り戻せ

 新潟市近郊の海岸から砂浜が消えつつある。新潟西港から角田岬に至る約28キロの「広域新潟海岸」では、この数十年間で砂浜が大幅に後退し、30〜40年後には消滅すると予測されている。新潟自慢の一つでもあった美しい砂浜を守ろうと、国、県、新潟市は共同でさまざまな取り組みを始めた。(斎藤健二)

■海の要塞化


写真:写真説明
ブロックの要塞と化した関屋浜。わずかに残った砂浜の斜面もブロックが整備されている
 かつては100メートル以上の砂浜が広がり、白砂青松と夕日で情緒にあふれていた新潟市の関屋浜。その砂浜も今や約30メートル。大河津分水や関屋分水路が通水し、新潟西港に突堤などができたことで、信濃川から海岸にもたらされる土砂量が激減したことが主な要因だ。

 関屋浜では1960年代から浸食対策工事が本格化。高波を防ぎ、砂浜の浸食を食い止める消波ブロックは、しかし台風で毎年のように崩れ、その度に積み直した。人工岬を造ることで解決したが、その結果、ほかの場所で浸食が進み、結局、同じような人工岬が次々にできた。いつの間にか砂浜はコンクリートの要塞と化した。

 同海水浴場組合副会長の福井良雄さん(48)は「広い砂浜は防波堤にもなっていた。人工物で守ることの無力さを痛感した」とため息をつく。

 海水浴客は94年に60万人に上ったが、2003年は10万人を割った。「景観は悪くても、砂浜を守るには仕方ない」と福井さんは思っている。

■景観を守れ

 「関屋浜から見る佐渡島と夕日は美しいが、浜辺の景観は他の海岸と比較にならないほどひどい」――。今年2〜3月、国や県が地元住民ら124人にアンケート調査したところ、そんな回答が目立った。

 かつての景観を取り戻そうと、国などは〈1〉浜辺に砂を補給する「養浜」〈2〉人工岬の造成〈3〉離岸堤・人工サンゴ礁の設営――をセットにした計画を提案。アンケートでは具体的な21案を示し、好ましいものを尋ねた。

 その結果、幅50メートルの砂浜を維持し、人工岬と人工サンゴを造る案と、風景と調和した離岸堤(長さ120メートル)を造る案に人気が集中した。海岸事業への税負担は現在、国民1人あたり年間550円だが、この2案なら「1人950円まで負担してもいい」との回答が多かった。

 国交省北陸地方整備局・信濃川下流河川事務所の渡辺正一課長は「原風景への住民の思いを壊すような構造物中心の対策はもはやできない。港、街、砂浜がこれだけ近くにそろう政令市はなく、砂浜を取り戻せば大きな売りになる」と話す。

■変わる浸食対策

 欧米の浸食対策は50年代から養浜が中心。「砂浜が一番の防波堤」との考えからだ。しかし、日本では構造物中心の対策が続いた。56年に制定された海岸法の目的は防護に偏り、その結果、海は“ブロックの墓場”と化した。

 国の縦割り行政も、新潟海岸の要塞化に拍車をかけた。日和山浜は旧運輸省(現国交省)、寄居浜〜関屋浜は県、青山〜五十嵐浜は旧建設省(現国交省)が管轄した。県の財政では手に負えず、国が直轄したためだが、3機関が隣接して管理するのは全国的でも異例だ。

 日和山浜〜五十嵐浜間(約14キロ)の浸食対策費は累計で少なくとも約700億円に上る。各機関の担当者は「担当する海岸を守ろうと、構造物を次々と作る対症療法に終始し、ほかの担当の所は無関心だった」と口をそろえる。

 「防護、環境、利用」を調和させた海岸作りを目指し、海岸法が改正されたのは6年前。ようやく養浜主体の対策を取れる環境が整った。砂浜を守る活動をしている「新潟砂丘の会」の阿部幸雄会長(62)は「将来を考えない工事のための工事が目立ち、環境と景観への配慮がなかった。日本人の原風景である砂浜を子どもたちに残さなければいけない」と訴えている。

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写真:写真説明
 国、県、新潟市が共同で計画を作る「広域新潟海岸保全計画検討委員会」が5月に発足した。大規模な養浜と最低限の構造物で砂浜の消失を防ぐのが目的だ。委員長の泉宮尊司・新潟大工学部教授(50)に聞いた。

 ――委員会の目指す方向は

 新潟海岸は信濃川を土砂の供給源とする点で共通している。それを3機関が別々に管理するのは非合理的。各機関の予算が減り、単独では事業の実施が難しくなったことも合理化の動きを進めた。年内には全体の砂浜の年間消失量を把握し、適切な養浜量を見いだしたい。

 ――養浜のコストはどれくらい?

 1立方メートルあたり平均5000円。土砂の不足分は年間14万立方メートルとみられ、この量を養浜すると年間約7億円が半永久的にかかる。事業費を減らすには、最低限の構造物を造り、養浜量も抑えなければならない。

 ――国はなぜ構造物中心の対策を取ったのか

 形が残る構造物は予算執行されたと確認できるからだ。養浜は確認しにくい上、長年維持費がかかるため、財務省が渋った。また欧米と異なり、日本は多くの人が海沿いに住んでいるため、浸食が社会問題化した。

 ――砂浜を取り戻す利点は

 日本の景観を代表する白砂青松は人に安らぎを与えるし、海水浴や散策、ビーチバレーなどレクリエーション空間にもなる。防護面はもちろん、海水の浄化や海亀の産卵、野鳥の生息など環境面でも役割は大きい。

 ――砂浜の消失は、ダムや河川とも密接にかかわる

 川、海はもちろん、水と砂の流れも連続しているのが自然の本質。ダムは水と一緒に土砂もため込み、漁港は海に漂う砂の流れをせき止めた。行政は本来、川の上流から海まで一括管理するのが望ましい。住民代表も加わり、全国初の“流域・沿岸域委員会”を作って議論するべき。新潟は浸食の先進地であり、その意義は大きい。

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