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「本物」しか認めない<1>おいしいもの見つけ隊どっとこむ人が生きていく上で欠かせない食。その信頼を揺るがす問題が後を絶たない。そんな今、「命の源」と真摯(しんし)に向き合う人がいる。生産者として、消費者として、一府民として。それぞれが抱く思いに光を当てたい。明日も安心して「いただきます」と言えるために。 澄んだ空気が心地よい。河南町上河内の山あい。「コケコッコーッ」。14棟の鶏舎から元気な鳴き声が聞こえてきた。 「餌には玄米やワカメ、ヒジキなどを混ぜます。すべて国内業者から仕入れたもの。おいしい卵を産んでもらうには安心できる餌が欠かせないんです」 2008年師走。養鶏場「タナカファーム」代表の田中元子(54)の言葉に、高槻市宮之川原の会社役員滝田圭樹(49)は、うなずいていた。産み立ての卵を触った時の温かさ、餌のにおい、土を踏みしめる感触……。滝田の顔は自然とほころぶ。「どんな人がどんな環境で育てているのか。現場に足を運ぶことで、肌でわかるんです」 滝田は、インターネットのサイト「おいしいもの見つけ隊どっとこむ」を1人で運営する。ファームに初めて連絡したのは04年だ。 「卵を購入したい。サイトで取り上げたいのです」 見知らぬ人からのメールに田中は驚いた。「変わった人がいるもんやな」。そう思いながら、サイトを見た。生産者の紹介や食べた感想から食材を生かすコツ、食事情のコラムまで。食を徹底して追求する内容に安心し、「掲載OK」の返事とともに卵を送った。 びっくりすることがあります。たまごがごはんひと粒ひと粒にうまく絡みあうのです。高いが、それだけの価値はあります。 ファームが紹介されたのは数日後。「何の利害もない人が、まじめに評価してくれるなんて」。田中の心は温まった。 滝田は35歳の時から、食品会社の開発・営業マンとして全国を回った。47歳で退職。今は別の食品会社の役員として週3日勤務する。「これくらいの価格でないと売れない。だからコストはこれくらいで」。生産者らにコストを示し、時には赤字の覚悟すら求めた営業マン時代。「ビジネスだから」と言い聞かせたが、割り切れない思いがたまった。 02年。長野の知り合いに毎年贈っていた有名ブランドのミカンが、2倍近い1箱6000円に跳ね上がった。小売店主に尋ねると「不作やから」。腑(ふ)に落ちず、ネットで検索すると名もない生産農家のサイトが目に留まった。頑固そうな父親と優しそうな息子が並んだ写真。価格も1箱3000円。「いける」。直感し、取り寄せて食べた。ただ甘いのではなく、酸味とのバランスが絶妙。想像以上だった。 「デパートで売っていない。知名度も低い。でも、おいしいものが埋もれているのではないか」。心のわだかまりが決断を後押しした。生産者と消費者との橋渡し――。思いが形になったのが「どっとこむ」だ。 仕事を終えて帰宅し、同居する両親が寝静まった深夜、「隊」の活動は始まる。「きょうはリンゴにしよう」。パソコンで閲覧していく目は、〈食のスカウト〉だ。「サイトの作りは下手でも、いい生産者はどこかに魅力を感じさせるものがある」。メールを送り、商品を取り寄せ、目と舌で「おいしい」と感じたものだけ、掲載した。「会いたい」と思えば訪ねる。全国10か所を回り、紹介した生産者や加工業者は140を超えた。 飯田栄一(53)が経営する香川県さぬき市の「飯田農園」。05年夏に訪れ、驚いた。2・5ヘクタールの桃畑の世話を家族4人だけでしていたのだ。ネット張りや袋掛け、水まき。やることは尽きない。「冬の間から、剪定(せんてい)をしっかりやらんと、おいしい実はできん」。労苦がぎゅっと詰まった一玉。ずしりと重かった。 「愛読者」は、グルメやアレルギーの子を持つ親、生産者まで様々だ。佐賀県武雄市の会社社長太田幹男(61)は、掲載された商品をこれまでに約10品取り寄せた。長野県の農家から届いたリンゴの箱には手紙が同封されていた。「天候不良で出来が悪いが、それでもえりすぐりの実を選びました」。作り手の顔が見えた。そんな気がした。「滝田さんの人柄と見る目が、こうした生産者を発掘するとでしょ」 滝田は07年6月、社団法人が認定する「ベジタブル&フルーツマイスター」の資格を取った。野菜と果物の知識を伝える「ソムリエ」。食の安全が脅かされる今だからこそ、関心を持ってもらうために食育に取り組みたいと思っているからだ。「なぜおいしいのか、なぜ甘いのか。自分から情報を集める姿勢が大切。『安全安心』は待っていてはあかんのや」(文中敬称略) (山本慶史) <メモ> 肥料や飼料、栽培方法にこだわりを持ち、安全でおいしい食べ物を届ける生産者や加工業者を無償で紹介する。アクセス件数は月約4500件。ブログの「隊長日記」、週刊のメールマガジンもある。http://www.mitsuketai.com/ (2009年1月1日 読売新聞)
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