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《1》 45人が日本語教室 本庄西小(2007年9月21日)

「おはよ、う」一歩一歩

 日本語指導が必要な外国籍の児童が42人(20日現在)と県内で最も多い本庄市立本庄西小学校(沢入育夫校長、児童数497人)。今月5日、学校を訪ね、まず目についたのは廊下の掲示板だった。


写真:写真説明
廊下には各国の言葉であいさつを紹介した掲示板も
 「おはよう」「こんにちは」「さようなら」などの文字が、英語やポルトガル語、中国語で書かれ、カタカナで読みがふってある。音楽室や保健室の入り口には、ひらがなの下にポルトガル語やスペイン語の表記。

 42人の国籍はまちまちだ。ブラジル33人、ペルー3人、ベトナム1人、フィリピン2人、日本とブラジルの両国籍3人。ほかに、日本国籍のフィリピン2人と無国籍の1人がおり、日本語をほとんど話せない児童は計45人。全児童の約9%を占める。

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写真:写真説明
日本語指導教室で、教師や通訳からマンツーマンで日本語を教わるブラジル日系の児童たち▲
 彼らに日本語を教えるため、8年前に設けた「日本語指導教室」をのぞいた。入り口には世界の国旗が飾られ、教室内には「あいうえお表」や世界地図などが所狭しと掲示されている。

 県内で唯一、1〜3年用と4〜6年用の2教室があり、教師2人と市が独自に雇った通訳2人の計4人が指導に当たる。45人は個々のレベルに応じて週1〜5日、クラスの授業とは別にここで日本語を学ぶ。

 3時間目の開始前、ブラジル国籍の5年生A君(10)が友人たちと走りながら教室に駆け込んできた。今年4月、同校に転入したばかり。「3人の中で一番足が速いのは誰だい?」。日本語指導担当の根岸峯生教諭(57)が尋ねると、A君は跳びはねながら自分の顔を指さした。なぜか言葉は発しない。

 根岸教諭は「私とも会話はまだないんです」とささやいた。A君は、前にいた学校で「言葉が変」と友人らにバカにされて以来、学校ではほとんど話さなくなった。学習の理解は早いが、授業で分からない点があっても、教諭には質問しない。

 A君が校内で唯一会話ができるのは、市が雇ったブラジル日系2世の通訳、北辻かおるさん(47)だ。クラスではできない国語の音読練習も、ここなら小さな声を出せる。

 A君は日本語で音読しながら、時折、「ごみ問題って何?」などとポルトガル語で質問し、そのたびに北辻さんがポルトガル語で説明する。「日本語は読めても、意味がわからないことが多い」という。A君がつまずいたり、黙り込んだりすると、北辻さんはポルトガル語で「日本語が分からなくても負けないで」と優しく励ました。

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 A君と背中合わせに座るブラジル国籍の同級生B君(10)は、根岸教諭が用意したイラスト入りのプリントを使いながら、あいさつの練習。根岸教諭がポルトガル語で「ボン ヂーア(おはよう)」と言うと、B君は「おはよ、う…ございます」とゆっくり答えた。

 B君は約7年前に来日した後、保護者の意向で本庄市内のブラジル人学校に入学した。しかし、学費が高いことなどを理由に、間もなく通学しなくなり、その後4年ほど“不就学”が続いた。今年7月に転入したが、1年生の学習内容も十分に理解できず、日本語の学習と並行して小学1年レベルの学習から始めた。

 A君やB君のような生徒は珍しくない。「でも、他国の子供との交流は、日本の子供たちの将来にも必ずプラスになる。そのためにも学校側の努力は不可欠なんです」。沢入校長の言葉が重く響いた。

          ◇

   ■国語・4か国語教材

      国際交流員を派遣 県教委が支援策

 県内の外国人児童生徒数の増加に伴い、県教委は2002年度から独自の支援策や事業を実施している。

 03年3月には、4か国語(英語、ポルトガル語、スペイン語、中国語)に対応した日本語学習教材「彩(あや)と武蔵の学習帳」を5000部作製し、県内すべての公立小中高校や県立図書館などに配布した。

 06年9月には小学5、6年生用の国語教科書から、読み物教材などを4か国語(同)に訳した「4か国語で読む国語教科書」を930部作製。日本語指導が必要な児童生徒のいる小中学校に配布した。

 県教委には、海外経験が長い非常勤職員として「帰国児童生徒等支援アドバイザー」1人と、英語、スペイン語、ポルトガル語を母国語とする「国際交流員」3人を配置。県内小中学校から要請があれば学校に派遣するほか、教諭への助言や電話相談にも応じる。

 06年度からは日本語指導担当教諭を対象にした研修会も始めた。専門講師から日本語の指導方法を学んでもらうほか、互いの指導法や悩みなどを共有し、解決策を探る場としている。

 市町村レベルでの取り組みも進む。深谷市は、外国籍児童生徒の教材費などとして1人当たり1200円を負担する。例えば、5年生でも日本語の習得レベルに応じて3年生のドリルを購入することも可能。

 ふじみ野市は文部科学省の委嘱事業の一環として07〜08年度、東京国際大の留学生と協力し、小中学校での通訳などを支援してもらう予定だ。市内の学校にはフィリピン国籍の児童生徒が多く在籍するが、国や県の支援ではタガログ語の指導は十分とは言えないため、市独自の支援策を打ち出していくという。

 ほかの市町村教委でも、有償ボランティアや支援員を活用するなどして、地域の実情に応じた独自の支援を実施している。

   ■「外国籍」増加3245人

 県教委によると、県内の外国籍の児童生徒は2006年(5月現在)で3245人。1994年(同)は2153人だったが、10年後の04年(同)には3000人を超え、その後は年間100人前後のペースで増え続けている。

 市町村別(06年度)では、川口市が470人で最も多く、さいたま市455人、草加市156人、本庄市120人、熊谷市117人など。県南や県北の学校に多い。母国語別(同)ではポルトガル語236人、中国語185人、スペイン語178人などとなっている。

 文部科学省によると、日本語指導が必要な県内の外国籍児童生徒は99年度以降、約830〜910人で推移している。06年9月時点で小学校は194校で638人、中学校は116校で205人に上った。全国の公立小中高校では約2万2000人(06年度)と前年度より8・3%増えた。

 こうした事態に対応するため、文科省は08年度から母国語と日本語を話せる「専門支援員」1600人を全国の学校に配置するため、人件費など約20億円を予算要求する。

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