ニュース 速報 YOMIURI ONLINE(読売新聞)
現在位置は
です

本文です
[第1部 地域おこし]

(12)秋田の元気 私が守る

海老名 保(えびな・たもつ)さん 「超神ネイガー」として古里を盛り上げる 38 (にかほ市)

「世の中は試練の連続。子供たちも強さを身につけて」と語る海老名さん(左)と超神ネイガー=井上宗典撮影

 秋田が誇るご当地ヒーロー「超神(ちょうじん)ネイガー」は、2005年秋に本格デビューした。「泣く子はいねがぁ!」という〈なまはげ〉のかけ声から、その名がある。企画・制作し、ショーでネイガーを演じるのが海老名さんだ。

 (出身地のにかほ市で)スポーツジムを経営する傍ら、幼少期からのヒーロー好きが高じて7年ほど前から、趣味でマスクの創作を始めました。次第に「ヒーローショーをやりたい」と考えるようになり、03年春、東京の大手プロダクションに「ショーを主催させてほしい」と申し出ました。当然、門前払い。その時に意地が出た。知名度もお金もコネもないけど、借り物でなく、オリジナルの“地産地消ヒーロー”を登場させようと決意したんです。

 やるからには、明るい話題の少ない秋田を、少しでも盛り上げたい。友人の会社員らとアイデアを練った結果、徹底して方言や物産品を盛り込もうと考えました。

 キャラクター名から武器、衣装に至るまで、「ネイガー」には秋田弁や県産品が駆使されている。

 格好良さだけでなく、「遊び心」も入れたかった。ネイガーの武器は、秋田沖で取れるハタハタの卵から命名したハタハタ型拳銃「ブリコガン」と、きりたんぽ仕立ての木刀「キリタン・ソード」。ヒーローなのにへんてこな武器を持ち、口を開けば秋田弁。その落差に大人は笑ってくれた。遊びの部分が、大人にも受け入れられたポイントだと思っています。

 県内のショッピングセンターや老人ホーム、幼稚園などで仲間と行ったショーは、昨年1年間で170回を超えました。地元企業がネイガーをラベルに使った地酒やグッズを売り出したほか、選挙の啓発ポスターにも起用され、地元テレビ局でもネイガーが主人公の番組ができました。わずか2年余りでこんな事態になるとは……。全く予想していませんでした。

 少年時代はタイガーマスクと仮面ライダーにあこがれた。にかほ市内の高校を卒業後、倍率100倍の難関をくぐり、都内のプロレス団体に入団したが、その先には挫折が待ち受けていた。

 20歳になる直前、練習中に頭を強打し、重いけがをしました。手術前、「念願の改造手術を受けてきます」と冗談を言って周囲を笑わせましたが、結局、プロレスラーは断念せざるを得なかった。初めて味わった挫折でした。

 俳優業やスポーツインストラクターを経験した後、地元でジムを開こうと帰郷しました。「一流」に挑戦したけど、結果は出せなかった。しかし、自分は二流の男だと自覚した時、気持ちが楽になりました。二流でも、努力すれば地元で活躍できる。そんな発想の転換ができたことが、今の「秋田にとことんこだわる」という発想につながったのかもしれません。

 これからも、身近なヒーローとして、どんなイベントでも精いっぱい演じるつもりです。ショーではトランポリンを使って宙返りをするなど、ダイナミックさも取り入れています。子供にはごまかしがききません。人間を超えたヒーローを演じるわけですから、役者たちは日々、体を鍛え、筋力を維持する努力を続けています。アクションに磨きをかけ、観客をさらに驚かせる仕掛けを考えていきたいと思っています。(聞き手 井上宗典)

 第1部「地域おこし」は今回が最終回です。29日からは、第2部「アート」がスタートします。

ご当地ヒーロー 隣県にも

秋田のホジナシ怪人と戦う岩鉄拳チャグマオー(右)(今年1月、盛岡市のショッピングセンターで)=イベント会社「ストック」提供

 岩手県にも昨年6月、ご当地ヒーローが誕生した。その名も「岩鉄拳(いわてっけん)チャグマオー」。岩手の伝統行事「チャグチャグ馬コ」をベースにしたヒーローで、マスクは馬の顔、手の甲は岩の形、ベルトには岩手県の県章が描かれている。

 必殺技は、鉄瓶をはめた拳で繰り出す「南部鉄拳大沸騰パンチ」。登場の際のセリフは、岩手県出身の宮沢賢治の詩をもじった「悪にも負けず、嵐にも負けず、岩手を守る!」。岩手色たっぷりだ。

 チャグマオーも、海老名さんがデザインと制作を担当した。岩手県内のイベント企画会社から依頼を受け、ネイガーと同様、岩手の文化や特産品などを徹底的に調べ上げて、昨年2月に制作を開始した。

 登場以来、岩手県内のチャグマオー人気は上昇中。海老名さんは「ヒーローにあこがれる子供たちの純粋な心は、隣県でも変わらないはず」と話す。

 海老名さんはさらに、青森県に登場させるご当地ヒーローの制作にも取り組んでいる。「将来的には、東北6県すべてに、その土地の要素を取り入れたヒーローを誕生させ、東北全体の活性化につなげたい」。夢は広がる。

プロフィル
えびな・たもつ
 1969年4月、旧象潟町(現・にかほ市)生まれ。身長1メートル82、体重88キロ。妻と長男の3人暮らし。
セリフは方言 武器は県産品
 超神ネイガーは、県内で農業を営む青年「アキタ・ケン」が、県民を米の害虫カメムシにしようとたくらむ「ホジナシ(秋田弁で「いいかげん」の意)怪人」を倒すストーリーだ。
 ショーでは、戦闘員「ホジーネ」が子供に悪いことを教えていると、「おめがだ、好きなようにはさせねえど」とケンの秋田弁が聞こえ、ネイガーが登場。キリタン・ソードを振り下ろす「比内鶏クラッシュ」がさく裂し、ホジナシ怪人を一網打尽にする。米穀店に勤める秋田美人の「マイ」らが加勢することも。
 約30分間のショーの後は握手会が恒例。海老名さんは「子供たちの長い行列を見ると、胸が熱くなる」と話す。
2008年3月22日  読売新聞)
現在位置は
です