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住民の納得 「計画ありき」姿勢転換を<8>

 大橋川改修事業の連載を通じて、行政や住民ら多くの関係者に話を聞いた。そこで感じたことは、賛否が分かれる大事業にもかかわらず、議論が十分に尽くされていないのではという疑問だった。

 国や県、松江市は住民説明会や町内会役員との協議、広報誌で説明してきた。ただ、改修計画そのものの妥当性に関する議論が不足していたのではないか。

 事業は鳥取県側の反対で約19年間中断。再開された2001年までに、治水3点セットのうち、上流のダムや放水路の建設が進み、改修のみ残った。そのため、3点セットの意義に疑問を抱く住民が多かった。また、改修に合わせて松江大橋、新大橋のつけ替え、市道拡幅やまちづくりを国費で賄えることもあって、県・市が国と一体となっているように住民には映り、不信感を持たれている。

 治水の必要性自体を否定した住民は皆無だったが、ある住民は「やってみなければわからないなら、やってはいけない」と語った。景観や環境を損なえば回復は難しい。計画が作られた約30年前から社会の価値観も変わった。住民の大多数が納得できるよう、まずは国が「計画ありき」の姿勢を転換することが必要だ。(藤戸健志)

(おわり)

<堤防の高さ・形状>

○国の計画と主張

 宍道湖―中海間の両岸に標高3.5メートルまでの堤防を築く。市街地は標高2メートル以下の地盤が多く堤防は必要。計画高水位(標高2.5メートル)より上は段階的整備も検討し、景観に配慮した形状や材質にできる。

○見直しを求める住民の主張

 高い堤防を築けば住民と川が分断され、水辺に近い松江らしい景観を損なう。現状の地盤のまま60センチ程度のコンクリート壁を設ける程度に。

<松江大橋ー新大橋間の拡幅>

○国の計画と主張

 川幅が狭い上流部南岸で13〜20メートル拡幅し川幅を140メートルに。堤防を整備した宍道湖西岸では大規模な浸水は起きなくなり、ダムと放水路だけでは効果は不十分。中・下流も可能な限り拡幅するが、塩分遡上(そじょう)を防ぐため川底を計画以上に掘削できない。

○見直しを求める住民の主張

 立ち退きなど住民生活への影響が大きい。拡幅しても朝酌川など5河川との合流地点では満潮時に水が押し戻される。上流部を拡幅すれば、下流部の危険性が増す。ダムと放水路の完成で水位も下がるはずで、効果を見極めてから検討するべきだ。

<松江大橋架け替え>

○国の計画と主張

 橋げたの高さが不足する両橋はつけ替える。両橋とも架橋から約70年を経て耐震基準を満たしていない。灯籠(とうろう)などの外観への配慮も可能。

○見直しを求める住民の主張

 松江大橋は水都・松江を代表する景観。壊さずに補強にとどめて活用すべきだ。洪水時でも橋げたに流木などがひっかかった例は見たことがない。

<工事の影響>

○国の計画と主張

2橋の架け替えなどで5〜10年の工事期間がかかるが、可能な限り工期短縮を図る。仮橋を架け、イベントを催すなどの対策も考え、営業補償も方法などを真剣に検討する。

○見直しを求める住民の主張

 松江の“顔”にあたる中心街で長期間工事をすれば観光客が減って観光産業に重大な影響を与え、商店街の死活問題になる。営業補償も必要だ。

<住民意見の反映>

○国の計画と主張

 町づくりはまちづくり検討委員会と景観専門委員会で、環境への影響は環境検討委員会で、それぞれ住民や有識者の意見を聴いている。新たに大橋川改修技術検討懇談会を設け、治水に関する住民の意見も聴いて検討する。

○見直しを求める住民の主張

 現計画に批判的な意見が取り上げられない。国は住民の意見を聞き置くだけで、歩み寄る姿勢がない。

2008年4月8日  読売新聞)
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