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母国復興へ「人育てる」

アフガンへ医療支援 レシャード・カレッドさん 島田市

アフガニスタンの現状を語るレシャードさん。手前は、故国に送る医薬品など

 「あれほど懸命にアフガンに尽くしてくれていたのに」

 掛川市出身のNGOスタッフ・伊藤和也さん(当時31歳)が2008年8月、アフガニスタンで殺害された事件。「テロとの戦い」や内戦で荒廃したアフガニスタンへの医療支援を続けるNGO「カレーズの会」理事長のレシャード・カレッドさん(58)(島田市)は、アフガニスタン人として重い責任を感じていた。

 「アフガニスタンは忘れ去られた国である」。伊藤さんはレシャードさんの講演を聞き、アフガンの現状を知った。農業支援をしたいと、レシャードさんの紹介でNGO「ペシャワール会」(本部・福岡市)へ。その活動中の悲劇だった。

 「伊藤さんが遺体で見つかった」との報道から1時間後、レシャードさんは掛川市の伊藤さんの実家で両親に頭を下げていた。その時、涙で目をはらした母の順子さん(56)が振り絞るような声で言った。

 「先生、お願いがある。和也の夢が半ばで絶たれるのはしのびない。この事件で支援が制限されることだけはないようにお願いします」。心が震えた。「伊藤君の死を無駄にしてはいけない」と誓った。

 レシャードさんは19歳で政府留学生として来日。京都大医学部を卒業し、呼吸器科医として赴任した島田市に医院を開業した。娘4人は独立し、今は妻と2人暮らし。08年7月からは市医師会長として、地域医療に尽くしている。

 母国の現状を憂いて02年4月、カレーズの会を設立した。現地では栄養不足などで、5人に1人が5歳までに死亡するという。同年7月には出身地のカンダハル中心部に診療所を開いた。訪れる患者のほとんどは女性や子供。診察代を払えない人も多いが、薬代は無料にして1日200人以上を受け入れている。

 会は寄付を募り、診療所の医師ら20人のスタッフの人件費や薬代、医療機器を送っているほか、人材を育てようと現地の医師や看護師を日本の医療機関に招いている。「技術支援を通じて、社会を担う人材を育てたい。アフガンの真の復興には、物品の支援頼みでなく、アフガン人の自立が必要だから」。農業支援を続けた伊藤さんの精神と重なり合う。

 伊藤さんの死から間もない9月半ば、レシャードさんにアフガンから再び悲報が届いた。初の研修生として03年に招いた医師マムン・タヒリさんが、国の感染症対策官として地方に向かう途中、自爆テロに巻き込まれて死亡した。30歳代半ばだった。県立総合病院(静岡市葵区)や聖隷三方原病院(浜松市北区)などで1年間研修し、母国で活躍していた。「なぜアフガンに尽くす若い人たちが次々と亡くなっていくのか。本当にいたたまれない」

 レシャードさんは今、アフガニスタンにいる。教育支援に本格的に乗りだし、4月にカンダハルに小学校を開校させるためだ。昨年末から、建設現場や診療所を忙しく回っている。

 「伊藤さんたちが体現したように、私たちもアフガン人の命を支えるカレーズ(地下水脈)になりたい。一人でも多くの命を救って、次の世代につなげていく。それが伊藤さんやマムンさんの供養にもなる」。レシャードさんは改めてそう心に決めた。

 (おわり)

 (この企画は磯部濤資、小川典延、杉原洋嗣、鈴木毅彦、豊川禎三、出口太、高田育昌、星聡、須藤有基、寺島真弓が担当しました)

2009年1月9日  読売新聞)
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