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畜産新ブランド〈4〉

名人招き「幻豚」開発 人工授精で遺伝子改良も

写真:写真説明
富士山の溶岩石で焼いたルイビ豚のステーキ(東京・上野の「東京豚バザール」で)
 「朝霧高原で日本一うまい豚を作ってみないか」

 富士宮市宮町の食肉販売店「さの萬」社長の佐野佳治さん(54)が、鹿児島県から黒豚作りの名人の柳瀬政士さん(59)を朝霧高原に招いたのは2005年5月。1年以上に及ぶ新ブランド豚開発の始まりだった。

 柳瀬さんは養豚歴30年の経験を生かし、餌には脂肪が少なく、うま味の源になる、でんぷん質を多く含んだ麦やサツマイモを、通常の2倍以上の25%混ぜた。不足するカロリーは、きな粉などで補った。

 豚は通常、食肉処理まで180日前後かかるが、柳瀬さんは、250日前後と時間をかけ、餌にこだわるため、飼育コストも高くなるが、「おいしさには代えられない」。

 新ブランド豚は今夏ようやく完成し、7月1、2日、さの萬店頭の試食会でお披露目された。来場者からは「焼いている時の香りがたまらない」「牛肉みたいな食感だ」など評判は上々だった。

 柳瀬さんは「焼いても縮まないし、冷めても硬くなりにくい。今話題のイベリコ豚以上に、ジューシーで甘味がある」と自信を見せる。佐野さんも「焼くと、もちのようにふっくらする。脂のうま味が格別で、豚カツにしたら、もう最高ですね」

 公募した新ブランド名は、「二つとない幻のような味」との意味を込め、「富士朝霧萬幻豚」と決まった。朝霧ブランドの主力商品として、秋にも本格販売される予定だ。


写真:写真説明
擬雌台に乗せた雄豚から精液を採取する桑原さん(富士宮市粟倉で)
 一方、同市北山に日本初の豚人工授精センター「富士農場サービス」を開設した獣医師桑原康さん(53)は「日本人の味覚に合ったおいしい豚を作りたい」と遺伝子改良に情熱を注ぐ。

 「肉質の50〜60%は遺伝で決まる」が、桑原さんの持論だ。優秀な血統を求めて世界各国を渡り歩き、大ヨーク種など“世界遺産級”の豚を買い集めてきた。費用は1億円を超えた。

 雌豚に見立てた擬雌(ぎひん)台に雄豚を乗せ、自然交配に近い状況で精液を採取する方法を考案。人工授精を繰り返し、優秀な遺伝子へと改良を続けた。

 豚肉の王様と言われるランドレース種、ヨークシャー種、バークシャー種を掛け合わせた豚は、それぞれの頭文字(LYB)から、有名ファッションブランド名をもじって「ルイビ豚」と命名。ふんわりとした触感が人気を呼び、東京・上野の豚肉専門店「東京豚バザール」や、富士宮市宮町の「ポーク神社」には、全国から客が訪れる。

 さらに、桑原さんは豚の精液を5〜18度に保存し、7〜14日間保管できる希釈剤「マルベリー3」を開発。全国1700余りの農場に精液を宅配便で供給している。マイナス196度の液体窒素が入った凍結保管器「遺伝子バンク」に、約5000頭の優秀な精液を保存している。遺伝子バンクの名は「夢のつぼ」。

 桑原さんは、一生涯かけて、新たなブランド豚の開発に挑む。

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