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第1部 終わりなき備え <2>

防災意識の自立手助け

写真:写真説明
紙芝居と手話で地震対策を伝える「やじろべえ」の阿多代表(左)ら(静岡市清水社会福祉会館「はーとぴあ清水」で)
 「耳が聞こえません」「情報を知らせてください」。40センチ四方の黄色のハンカチは、聴覚に障害のあることを示す合図。蛍光色仕様で、暗いところでも周囲の注意をひくことができる。県聴覚障害者協会が1995年、聴覚障害者らに4000枚を配り、携帯するよう呼びかけてきた。

 「最初は抵抗感がありました。ハンカチを振っても、無視されたら惨めだからね」。耳の不自由な静岡市清水区興津中町の小笠原均さん(57)はハンカチを受け取ってそう感じた。そんな思いを取り払ってくれたのは、障害者が自立して防災に取り組めるようにと、支援する人々の輪だった。

 ボランティアグループ「やじろべえ」(阿多サエ子代表)は、95年の阪神大震災の直後に発足した。大震災では、耳の不自由な人や手話通訳者にも犠牲者が出た。その教訓から、旧清水市(静岡市清水区)の手話サークルのメンバーを中心に集まり、約20人が活動する。

 聴覚に障害を持つ人々と防災対策について話し合う場としてスタートし、被災後に難航が予想される聴覚障害者の安否確認のため、旧清水市全域のリストを独自に作った。

 「聴覚に障害を持つ人は、読解力に難がある場合が多い」。同グループの屋島洋子さん(61)は毎月、防災対策について会合を重ねるうちにそう感じている。

 8年前に、聴覚障害者向けの冊子「地震 そのときわたしは」を作成した。屋島さんらメンバーは、県や市が発行した一般向けの防災資料は難しすぎると感じた。

 そこで、避難場所の確認の必要性、家具転倒防止のための器具の紹介、警戒宣言が発令された場合の行動手順などを、わかりやすいようにと、手話で意見交換を重ねながら仕上げた労作だ。

 グループ手作りの紙芝居も、「視覚的に地震対策を伝えていてわかりやすい」と評判がいい。耳の不自由な両親を持つ少年が、大地震に備え、家の中や非常持ち出し品を点検する親しみのあるストーリーが魅力だ。

 グループのこうした活動に支えられて、「防災意識を身につけ、他人を介助する必要性も学べた」と小笠原さん。消火器を使った防災訓練などにも積極的に参加している。

 県内で聴覚に障害を持つ人は約9000人いる。ただ、「防災と福祉が連携し始めたのは、ようやくここ数年の話」(県障害福祉室)だ。

 「やじろべえ」の取り組みは、聴覚に障害を持つ人々の意識を少しずつ変えた。阿多代表(58)は「弱者だから何とかしてくれる、というのでなく、あくまでも自分の身は自分で守る。私たちはその手助けをするだけです」

 地道で息の長い取り組みが続く。

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