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ショップ(9)母国の商品並び、心和らぐブラジルの「国民食」と言われるのが、豆を煮込んだフェジョンだ。それをたっぷりとかけたご飯をビュッフェで味わう女性たちの脇を抜けると、直輸入や商社を通じて仕入れたブラジル商品が所狭しと並んでいた。肉をはじめとする食料品から、雑貨、話題のベストセラー商品まである。
「ブラジルで月曜日に発行された週刊誌は、木曜日には買える。ポルトガル語雑誌は50種類ある」。増子さんは、ブラジル料理に欠かせないパンやコロッケ工場も浜松市中区内で営み、愛知、群馬県などに出荷している。在日ブラジル人の間で立志伝中の人だ。 戦争中に敵対していたことが災いして、戦後ブラジルには根強い日本人差別が残った。それでも「日本は素晴らしい国」と言い続けた父親に、増子さんは反発。だが、アメリカに並ぶ経済力を得た姿に、「おやじは間違っていなかった」と、1988年に来日して工場に勤めた。日本語がわからず嫌がらせも受けたが、とりわけ「食」がつらかった。 「日本料理はブラジル料理に比べてボリュームが足りず、腹持ちしない」。それは在日ブラジル人共通の悩みだった。ならばと、ためた金で93年4月、セルヴィツー1号店を浜松市内に開いた。肉と黒豆をいためたフィジョアーダの缶詰やブラジル風のパンなどが、「爆発的に売れた」と振り返る。駅近くの店は今年5月の開店だ。 ブラジルショップは今、「浜松市内で20を超すだろう」と増子さんは言う。旅行業やパソコン店も入るチェーン店「キヨスケ」は市内に4店舗を構える。ピザ店や弁当店もある。 妻と暮らすジョージ・スズキさん(24)は来日して1年7か月。自動車部品工場で働くが、「値段も安めで何でもそろう。食事もうまい」と、週1回はセルヴィツーで買い物をする。「店に来ると心が和らいでブラジルに居るような気持ちになる」と話す。 一般の大型スーパーなどでも、ブラジル商品コーナーを設ける店が出ており、在日17年になるポルトガル語新聞の販売担当土谷アントニアさん(53)は「日本にいることを一瞬忘れてしまう」という。 増子さんは「日本のスーパーには今以上にブラジル商品が入るだろう。逆に、ブラジル専門ショップは減るのではないか」とみる。 増子さんも土谷さんも、来日当初は「日本」に入り込まざるを得なかった。 「あいさつやお辞儀の仕方から大変だったが、だから日本人の友達がいっぱい出来た。でも最近のブラジル人は、同じアパートの日本人にもあいさつしない」と土谷さん。便利になったブラジル人社会と日本人との間に溝が広がっているのではないか。先住者たちは心配する。 (鈴木直志)
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