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(5)社会保障費

医療費抑制 弱者の負担増

健康づくり推進員から体脂肪のチェックを受ける男性(宇都宮市の生活習慣病予防キャンペーンで)

 宇都宮市の男性(69)は毎週火、木、土曜の夕方、自宅から約6キロの病院に車で通い、人工透析を受けている。慢性腎炎を患った10年前からの「命綱」だ。

 透析には4〜6時間かかり、その間、食事療法も兼ねて病院が出す「透析食」をとる。ある日、男性がいつも通り透析食を食べていると、隣り合わせたベッドの患者がおにぎりを取り出した。「食費を切り詰めるために持参している」という。

 2002年の診療報酬改定で、透析食は保険適用外となり、1回630円の食事代は患者の全額負担となった。さらに07年、透析患者を含む県の重度心身障害者の医療費助成制度が見直され、医療機関が月単位で作成する診療報酬明細書(レセプト)1部当たり500円が患者負担に。「この2つだけで年間10万円を超える負担増。楽ではない透析患者の生活を一層苦しめている」と男性は憤る。

 繰り返される診療報酬の引き下げ改定、助成制度見直しの背景には、少子高齢化を見据え、予想される医療費の増大を抑制する狙いがある。県内の透析患者らでつくる「県腎臓病患者友の会」の竹原正義会長は「医療費抑制の流れは、弱者にしわ寄せが来ているのが現状だ」と危機感をあらわにする。

 生活習慣病を未然に防ぐことで、医療費の伸びを抑えようという動きも本格化している。県の「医療費適正化計画」で大きな柱となっているのが、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を防ごうと、40〜74歳を対象に今年度スタートした「特定健康診査」や「特定保健指導」だ。メタボは糖尿病などの生活習慣病につながるとされる。県内約5000人の透析患者の約45%は糖尿病性の腎機能低下に起因しているという。

 健診や保健指導の実施率を上げようと、各自治体も独自に取り組みを進める。宇都宮市や足利市などは、「健康づくり推進員」「生活習慣改善推進員」などのボランティアを地区ごとに養成。県も企業や市町と連携したキャンペーンを行い、啓発活動に懸命だ。ただ、こうした取り組みは始まったばかり。予防対策が医療費削減に数字として現れるのは、「5年後以降」とされる。

 こうした病気予防に力を入れると同時に、医師の確保など必要な分野には財源を惜しまず投入することが重要だ。国民の不安を解消するため、医療は大きな転換を迫られている。

 ◇医療費適正化計画 国が2006年度の医療制度改革で、各都道府県に策定を義務付けた。県の計画は2008〜12年度の5か年で、生活習慣病予防対策などが柱。〈1〉特定健診の実施率70%以上〈2〉平均在院日数(34・9日)の3・3日減――などを目標とし、5年間で計303億円の医療費抑制を見込んでいる。

 (おわり。この連載は勝俣智子、畠山朋子が担当しました)

2009年2月12日  読売新聞)
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