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書家・アーティスト 柿沼康二さん(矢板市出身)書道をアートに高めるロック音楽を大音量で流しながら、畳10枚以上もある紙の上を縦横無尽に歩き回り、墨を含ませると重さ60キロにもなる大筆を走らせる。矢板市出身の書家柿沼康二さん(39)の創作風景だ。「作品に集中できるように、その時の気分に合わせて曲を決めるんです」 「書はアートたるか」をテーマに掲げて活動し、そのパフォーマンスは海外でも注目され、アメリカのニューヨークメトロポリタン美術館などで披露してきた。2007年の大河ドラマ「風林火山」や映画「アキレスと亀」(北野武監督)の題字なども手がけ、国内外で活躍している。 ☆ ☆ 父の書家柿沼翠流さん(73)の手ほどきを受け、東京学芸大(書道専攻)を卒業後、地元の高校の書道教師に。1996年、25歳で毎日書道展毎日賞を受賞し、若くしての受賞に周囲から驚かれたが、「欲しかったものが手に入り、これでいいのかなという疑問がわいてきた」。新たな目標として海外に挑戦しようと決意し、翌年、教師の仕事を辞めてニューヨークに渡った。 しかし、個展を開こうとギャラリーに作品を持ち込んでも、書はアートではないと見向きもされず、ショックを受けた。「書というだけではアートとして通用しない。まだ誰もやっていないことをやっていかなくては」。渡米から1年で帰国し、大作を書く作業をパフォーマンスとして披露するなど独自の道を歩み始めた。 一筆で円を描いた「○」、薄墨と朱墨で軟らかなタッチの「凸凹」など、絵画や図形を思わせる作品も。黒い和紙に金色で書く方法をヒントに蛍光塗料で書いたり、自作の詩を書いたりした作品は強烈な個性を放ち、書道を知らない人の心も引きつける。 ☆ ☆ 海外にも活動が知られるようになり、06年にはアメリカの名門プリンストン大学に客員書家として招かれた。一度は挫折を味わったアメリカに、「今度は落とし前をつける」という意気込みで乗り込み、学生に書道を教えた。今年もアメリカやヨーロッパなど海外から招かれ、パフォーマンスを披露する予定だ。 ☆ ☆ 「成長し続けるためには、人と同じことをやっていては限界を破れない」という柿沼さんだが、毎日、「臨書」を欠かさない。臨書は古典を手本にして一字一字を忠実に書く。「呼吸で言えば、臨書は吸う作業。オリジナルの作品を生み出すためには、まず吸収しないといけない」 現在は東京に住み、事務所を構えているが、大作を書く時は、矢板市の実家近くにあるアトリエで創作する。「自然がいっぱいで、電話も来客もないので集中しやすいんです」と笑う。 「自分の書が現代アートとして海外の美術館に収蔵されたら最高」という柿沼さん。100年、1000年後にも残る作品を書くことが夢だ。(木引美穂) (2010年1月14日 読売新聞)
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