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宇都宮城(宇都宮市)

 平安時代に作られ、江戸末期の戊辰戦争の戦火で焼け落ちた宇都宮城が2007年3月、平成の世によみがえる。将軍の日光社参の際に宿所として利用され、関東7名城の一つに数えられたこの城は、本多正純による徳川三代将軍・家光暗殺の陰謀「釣り天井事件」の伝説でも知られる。二つの櫓(やぐら)とそれを結ぶ土塀、土塁、堀の復元に汗を流す、5人を追った。(上田詔子)


写真:写真説明
「ここには、ふるさとがある。皆の心のよりどころとなればうれしい」。建設中の宇都宮城を前に語る藤井清さん
 「都市公園として整備します」――。こう記された看板を、宇都宮城本丸跡で見つけた1996年当時、宇都宮商工会議所会頭だった藤井清(ふじいきよし)さん(79)は、地元住民とも話し合いながら宇都宮城の復元を求めて市長らに陳情し、城を紹介するイベントを仕掛け始めた。「宇都宮は誇れる歴史があるのに、シンボルがない。宇都宮らしい街づくりの根っことしたい」。すると、徐々に賛同する声は高まった。97年、ついに都市公園計画は撤回され、市は「城址(じょうし)公園整備」にかじを切った。

 今も宇都宮の歴史を語る資料を読みあさり、「企業経営でも、どう時代の変化に対応するか、歴史から学ぶことは多い」と、力を込める。現在、市民側から復元を支える「よみがえれ!宇都宮城市民の会」の会長を務める。「特徴のない街には人は集まらないし、人材も育たない。宇都宮城は、市民の心のよりどころにもなる」と、熱い訴えは続く。

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写真:写真説明
大竹泰二さん
 「春は土塁の上で花見、夏はお堀で釣りをして、冬にはスケートで遊んだもんだ」。幼少から、宇都宮城本丸跡に親しんだ同市中河原町自治会長の大竹泰二(おおたけたいじ)さん(81)は、自治会役員として、地元住民に城址公園整備の理解を求め、奔走した。

 「宇都宮城の釣り天井はどこにあった?案内してくれ」。団体役員として勤めていたころ、客人からよくせがまれた。「昭和初期までわずかに残っていた城跡は、いつの間にか影も形もなくなってしまった。どこにも案内できない」。悔しい思いを重ねてきた。

 「今やらなければ、歴史は埋もれる」。97年に市が設けた有識者会議「御本丸公園再整備調査検討懇談会」では、地元代表として復元を主張した。市の中央に鎮座する二荒山神社前から南へ800メートルの地点に宇都宮城が記された「真景図」と呼ばれる当時の地図を全委員に配って視覚に訴え、復元への機運を醸成した。

 「今回は第一期計画。将軍の宿泊所となった御成(おなり)御殿や本丸御門のない宇都宮城は、さみしい」と語り、城の完全復元を夢見る。

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山本兵一さん
 昔ながらの材料・工法で2つの櫓「清明台」と「富士見櫓」の再現に挑むのは、大兵工務店(栃木市)の三代目親方・山本兵一(やまもとひょういち)さん(58)だ。床板と階段を残すのみとなり、「何とか笑われないものができた」と生粋の職人は満足感をにじませる。

 数寄屋造りを得意としており城郭建築は初めてだった。「設計図を見ても用語が解読できず、常に不安で一杯だった」と明かす。城郭辞典を片手に設計図に向かい、部分模型を作ったり、宮城県の白石城を視察したり、文献も読みあさった。「試作できないので、常に真剣勝負だった」。

 クギは打たずに、柱やはりを継ぎ合わせる伝統工法。木に水分が含まれていると、後で縮んでしまうが、機械乾燥はつやがなくなりもろくなるためタブーで、「木の乾き具合を予測しながら、木材を加工しなければならない」点に最も気を使った。東北新幹線からも東武宇都宮線からも櫓は見える。「えらいこっちゃなーと思う。携われて幸せだった」。

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小松七郎さん
 一方、土壁や土塀を一手に担うのが、小松左官工業(埼玉県所沢市)社長で、一級左官技能士の小松七郎(こまつしちろう)さん(61)だ。

 左官業の主流は今、鉄筋コンクリート。だが、「左官の基本は土」と、愛知の犬山城や金沢城の復元、土蔵や茶室の施工にこだわってきた。「土がいじれる人は、ごくわずかに」なり、危機感を覚えながら、地元の左官約20人の指導にあたる。

 栃木市の田んぼから採取した粘りけの強い土を吟味して選んだ。ワラを混ぜて半年寝かし、竹と縄で骨組みを作った壁に塗りつける。塗っては乾かすという作業を4〜5回、根気強く続け、約20センチの厚さの土壁を作る。幅2メートルの土塀を作るのに800キロもの土を使うが、足場が狭く、骨が折れる作業だ。土塀作りはこれからが本番になる。「みんなが見るものだから気合が入る」と職人としての心意気を見せる。

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神宮由美子さん
 今回の“築城”は、総事業費約36億円のうち、1億円を市民からの募金で賄う市民参加型だ。募金活動を担う「よみがえれ!宇都宮城市民の会」理事の神宮由美子(じんぐうゆみこ)さん(67)は、「城に愛着を感じてもらいたい」と広報活動に知恵を絞り、募金への協力を呼びかけている。

 復元される江戸中期の姿は、天守閣がない城の構造から、城としての目玉に欠けるなどとし、復元を疑問視する声もある。宇都宮市郊外に住み、城の存在を知らされてこなかった神宮さんも「計画当初は、自分も冷めていた」と打ち明ける。

 でも徐々に、「古いものをダサイと切り捨ててきた時代を反省し、ふるさとを見直し、誇りを感じるきっかけになればと思うようになった」。今では、各種イベントなどに出向いては、その思いを伝え、募金を募っている。

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