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(8)正造の願い語り継ぐ
「赤貧」とは、ひどく貧しいこと。衆院議員を辞して村に移り住み、廃村の後も、家屋が取り壊された後も村にとどまった正造の短歌「赤貧の洗うが如(ごと)き心もて無一物こそ富というなれ」にちなんだ。 正造は、足尾鉱毒問題解決を求めて明治天皇に直訴したことで知られる。だが、1841年、小中村(現佐野市)の名主の家に生まれたことや、キリスト教に帰依しながら1913年、佐野市の支援者宅で客死したことなどを知る人は、地元でも意外と少ない。 池田博穂監督(56)は「正造が訴えたことは、単に公害をなくせということだけではない。環境、農業、人権、平和など、現在の日本に通じることがたくさんある」と先見性を評価する。そして、「正造の生涯を系統的に見ることができる初めての作品になる」と自信をのぞかせる。 φ φ 映画を企画したのは、茨城県古河市の「田中正造を後世に伝える会」だ。旧谷中村民の子孫らが作る団体で、約60人の会員がいる。 古河市は、廃村の際、周辺市町村では最多の約120戸が移り住んだといわれる。正造が行った「谷中村救援大行進」を再現するイベントを行うなど、街をあげて正造の功績や鉱毒問題の伝承に力を入れている。 伝える会の副会長で、上映委員会委員長を務める永島盛次さん(73)は、「正造は古河の一つの文化であり象徴だ。映画を見て、正造の言葉や行動を、現在に重ね合わせてほしい」と訴える。 映画には、遊水地周辺の住民約150人もエキストラとして出演し、製作費の一部は、賛同者から集めた金で賄った。7月中に完成し、9月から全国で上映される予定だ。 φ φ 谷中村を編入した藤岡町は、古河市とは対照的だ。 合併期日の7月1日を「渡良瀬遊水池造成を偲(しの)ぶ日」とするよう求めた住民団体の陳情は、6月の町議会で、あえなく不採択となった。「谷中村関係者や研究者、関係団体の協力によって、歴史が後世に伝えられることを期待する」という理由だった。 陳情した「谷中村の遺跡を守る会」は、これまでも、「公害防止記念の日」制定などを求めてきた。だが、「公害には暗いイメージがある」などとして、町議会で不採択となっている。 旧村民を祖先に持つ町議の島田稔さん(65)は「個人的には複雑な心境だ」と感想を漏らしつつ、「不採択は町議会としての決定」と視線を落とす。あえて記念日にする必要はないというのが町の立場だ。 しかし、遺跡を守る会代表の針谷不二男さん(80)は、「負の遺産」であればこそ、それを正面から受け止め、町が率先して語り継ぐことが重要だと考える。「足尾鉱毒事件や谷中村の存在を知らない町民も多い。歴史を風化させないためにも、何らかの形で記念していくことが、旧村民や正造の願いだ」 (第1部おわり) (第1部は、土田浩平、中川誠、山本貴徳、武石将弘が担当しました)
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