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(31)手作りキャラに広がる笑顔小学生たちがアニメを作った。パソコンソフトで便利に絵が描けるようになった時代に、子供たちが手にしたのは紙と鉛筆だった。 「好きなように描いてごらん」。杉並アニメーションミュージアム館長の鈴木伸一さん(74)はキラキラした瞳のちびっ子たちの前で、教室いっぱいに声を響かせた。 昨年2月、杉並区立若杉小(現・天沼小)。4年生18人がアニメ『ふしぎのくにのワンダーサム』のキャラクターデザインに挑戦した。サムは同館のキャラクターを務める犬。鈴木さんは授業で1枚紙のシナリオを子供たちに渡す。登場するのは、バナナ売りのおじさんや卵の形をした妖精など。サム以外のキャラのデザインは、子供たちの手に委ねられた。 創造の泉は尽きない。シナリオにないキャラも次々に登場する。800歳のネコ、背中のハリを手のように自在に動かすハリネズミ、赤いたてがみの竜……。教室中をくるくる巡回する鈴木さんをうならせた。 こうした奇想天外なスケッチをもとに、作画を起こしたのは、町田美香さん(34)ら同館スタッフの2人。いずれもアニメ作りの経験はゼロ。鈴木さんの突拍子もない依頼に、戸惑いながらも、徹夜を繰り返して約1100枚の動画と原画を描き上げた。 授業から約1年後の今年3月8日、子供たちの作ったキャラが同館のスクリーンで躍動した。「ぼくの描いたウサギが動いてたよね」。エンドロールが流れ、パッと明るくなった会場に笑顔がはじけた。 鈴木さんは感激屋だ。子供たちの様子を見て、胸がいっぱいになる。「何て素晴らしい笑顔だろう」。鈴木さん自身、長いアニメーター生活の中でたくさんのキャラ作りにかかわり、人々の胸に残り続けるものを生み出してきた。子供たちに言いたいことは、ただ一つ。「君たちを感動させているものの正体は、命そのものなんだよ」と。 ■『ふしぎのくにのワンダーサム』■ 11分の短編。『不思議の国のアリス』のパロディー。黒ウサギから音楽会の案内状をもらったサムが、会場を探すうち、次々に不思議な世界を体験するストーリー。杉並アニメーションミュージアムで観賞できる。 (おわり、この連載は加納昭彦、竹井陽平が担当しました)
(2008年4月25日 読売新聞)
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