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利害調整 誰のため

「シモキタ」 再開発届かぬ声

計画に反対する住民たちが作ったポスター=飯島啓太撮影

 小劇場や古着、雑貨店などがひしめき、にぎわいを見せる「シモキタ」。この街を幅26メートルの道路が貫き、下北沢駅を地下化し、地上にはバスロータリーを作る計画が進んでいる。

 「ごみごみしているのがシモキタの魅力。街の個性がなくなる」。世田谷区議会に計画の見直しを求める陳情書を提出した歯科医師の下平憲治さん(49)はそう訴える。「理由を説明させてほしい」と、主要会派を回ったが、「既に決まったことだから」と断られ、陳情も採択されることはなかった。

 別の機会に顔を合わせたある自民党区議からは「個人的にはシモキタは変わってほしくないが、会派としては賛成するしかない」と打ち明けられた。

 計画を巡っては、日本建築学会も「自動車の入りにくい街の構造が文化を醸成した」と指摘し、見直しを要望しているほか、地元商店主なども同様の署名を区に提出している。

 「反対の声にも耳を傾けて意見調整するのが議員の仕事ではないのか」。下平さんの失望は深い。

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 「こりゃあ選挙に響くだろうと思った」。杉並区議の河野庄次郎さん(73)は、2004年に自身が地盤とする地域にホームレス自立支援センター設置の話が持ち上がった時のことを振り返った。

 センターは約60人のホームレスが4か月を限度に生活しながら仕事を探す施設。都と23区が業者に運営を委託し、5年ごとに各区が持ち回りで引き受けるもので、杉並区は06年4月からだった。候補に、都交通局の独身寮が挙がった。

 「病気で生活保護がないと路頭に迷う」「リストラされた」。普段から支持者のそんな悩みを聞いていた。「ちょっとしたつまずきで普通の生活が崩れ落ちる時代になった」と、センターを作り、再チャレンジを後押ししようと考えた。

 町内会の会議でセンターのことを伝えると、向かい合う約50人の住民たちから次々と反対の声が上がった。「あなたは行政の一員ですか」「子供に何かあったら誰が責任を取るんですか」

 だが過去にセンター入所者がトラブルを起こしたのかを区に問い合わせたところ、飲食店でバカにされた入所者が腹を立てて暴言を吐いて立ち去った「事件」が1件あるのみだった。

 「施設を受け入れた場合、トラブルの情報は必ず開示する」と区と都、施設に約束させた上で、数回の会議を開き、「入所者はハローワークに通うなど、自立の意思がある人たちなんです」などと繰り返し説明した。

 その結果、住民たちは「1階に宿直を付けてほしい」などの条件を付けて受け入れを認めた。

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 住民から反対された時、票のことを考えれば住民側に立つほうが有利だった。だが立ち直ろうとする人がいる時に、それを妨げることはしたくなかった。

 その後、07年の統一選で7選を果たし、今期で引退を決めている河野さんはこう話す。「地域の人々の声に耳を傾け、納得してもらえる解決策を見つけることも議員の仕事。利害がぶつかり合った時にこそ真価が問われる」

2011年3月5日  読売新聞)
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