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高校生の「夢」引き出す

スタッフと談笑する今村さん(左から2人目)=中野区の事務所で

 「将来は結婚して専業主婦になる」「どうして」「バカだから大学に行けない」「私もバカだけど、大学では一からやり直したいと思って努力したよ」

 昨年11月、都内にある高校の体育館。高校2年生5、6人と大学生が一つの輪になって座り、将来について話し合っている。そんな輪があちこちにでき、“先輩たち”の話を聞くうち、高校生はだんだんと打ち解けて、輪は小さくなっていった。最後に、「大学のパンフレットを見てみる」などと今後の目標をカードに書いて、プログラムは終了した。

 今村さんは約7年前から、こんな「カタリ場」を企画してきた。高校生にとって、少し年上の大学生の言葉が自分の将来や可能性を考える機会を生み出すと信じているから。

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 今村さんの実家は、岐阜県高山市で土産物屋を営んでいる。周囲に大卒者はいなかったが、漠然と大学に行きたいと思った。勉強はしたくなかったので、書類選考と面接中心の入試を受けていたところ、慶応大の総合政策学部に合格した。

 周囲の学生は、日本の教育について真剣に考えていたり、環境保護活動に精力的に取り組んだりと意欲的な人が多かった。地元の友人とは、まったく違った。日本は一部の人だけが頑張る二極化社会になってしまうと感じた。

 「自分は特別な人間でもないし、学力もない。でも一生懸命様々なことに取り組む人との出会いがあったから頑張ることができた」

 自身も周りから刺激を受け、ドキュメンタリーの制作などに挑戦したことに気づき、子どもたちに人と対話する時間を作り、何かに意欲的に取り組むきっかけを作る場を用意したいと考えた。4年生の時、学生団体のイベントで知り合った竹野優花さん(32)と2人で「カタリバ」を発足させた。

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 今村さんは大学卒業後、リクルート社などでアルバイトし、同社に紹介してもらった縁から千葉県の私立高校で1回目のカタリ場を開催できた。発足から約1年後のことだった。

 しかし、その後の2年間、ほとんど依頼はなかった。2人でアルバイトをしながら事業所の家賃などを支払い、学校を回る日々が続いた。そんなある時、教育関係者が参加する会合に竹野さんがついていき、公立高校の先生たちと意気投合した。数校でカタリ場を実施してもらったところ、口コミで評判が広がり、今年度は約100校が参加している。登録している大学生を中心としたボランティアは約4000人を数える。

 企業から高校生の意識調査などの仕事を請け負うなどして収入を得てきたが、08年頃から「不況で税収が減れば、行政からの予算も減る」と新たな事業に取り組む必要性を感じ、昨年から、新大学1年生を対象に大学生活をどう過ごすかを考えさせるプログラムを売り出している。

 その顧客第1号は、今村さんが卒業した慶応大の学部長を経験したことのある加藤寛さんが学長を務める嘉悦大(小平市)。それまでは、カタリバの大学生ボランティアに同大の学生はいなかったが、プログラム実施後は参加する人が出てきた。

 「自分たちが事業をやめたら、日本はつぶれてしまうという気持ちで活動してきた」という今村さんの生き方もまた、誰かの目にあこがれとして映っているに違いない。

■今村さんの歩み

1979年  岐阜県高山市生まれ

 98年4月 慶応大総合政策学部入学

2001年11月 「カタリバ」を設立

 02年3月 同大卒業

 06年12月 結婚

 09年6月 地域活動などに励み、輝いている団体や個人に与えられる、内閣府主催の「女性のチャレンジ賞」にカタリバが選ばれる

2010年1月4日  読売新聞)
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