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子育ての中心は親(1月31日付)

有元佐興さん

 正月三が日のこと。昔仲人をした夫婦が例年通り、二人の子どもを連れて年賀にきた。

 中学一年生と小学三年生になった二人は、私の前に窮屈そうにしながらも正座して、新年の挨拶(あいさつ)をした。

 そのお返しとして、私はお年玉を渡す。それから子どもたちは、暮れにもらった通信簿を私に見せ、いくつかの私の質問に答える。

 こんな形が、上の子どもが小学校に入ってからずっと続き、もう七年になる。

 家内からは、「子どもが小学校に入ったら(仲人の)お役目は終わり。自由にしてあげたら」と言われるが、私はあえて無視し、この訪問を受け続けている。

 この両親は共稼ぎで、日頃(ひごろ)から大変忙しい。だが、そんな中、懸命に子育てをし、貴重な正月休みを使って子どもを私に会わせる。年初めに決意をする意味を、子どもに悟らせようとしていることが、私の心に強く響いてくるからである。

 教育で言う環境には、人的環境、物的環境、社会的環境があり、最も人に影響があるのが人的環境であるという。しかし今日、多くの青少年の心情や行動に、あまりに社会的環境の影響の強さを感じるのは、昭和二十年以降の民主主義的日本文化がうまく定着していないからだ、と私は思う。

 「子どもが悪くなったのは社会が助けないから」「子育てに責任ある体制をつくるのは行政の義務」といった議論のみが目立つ風潮が、心配になる。

 未完成の子どもをあまりに一人前に考えたり、子どもの主体性のみを強調した自由を主張したりすることが、これまでの日本文化を崩壊させていることに気付かない人たちが増えているのではなかろうか。

 向こう三軒両隣、井戸端会議、お年賀といった庶民文化が、我が国の人的環境であったことや、人的環境の中心にあり、なにより子育ての要は親であるという当然のことが忘れ去られてはいまいか。

 これからも私は、正月に訪ねてくる親子を歓迎し続けようと思っている。親の思いを受け、子どもに対して偉い先生、怖いおじさん役を演じながら。(前日野市教育長)

        

 

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