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《5》医療―足りない小児科医

常に満床に近い新生児集中治療室。医師の負担も大きい(4日午後、県立中央病院で)

 9月下旬の夜、通常の診察を終えた県立中央病院(富山市)の医師が、富山市内で開かれた医師会の講演を聞いていると、携帯電話が鳴った。「早産の母親が運ばれてくる」。あわただしく席を立った医師に続き、一緒に聞いていた同病院小児科部長の畑崎喜芳さん(50)も急いで病院に駆けつけた。

 赤ちゃんは無事生まれたが、1000グラム未満の超低体重児。新生児集中治療室(NICU)で、気管の挿管や点滴などの処置が終わり、日が変わる頃に畑崎さんらはようやく帰宅。主治医は病院に泊まり込み、赤ちゃんに寄り添いながら、朝を迎えると、そのまま日中の勤務に就いた。

 同病院は、県の周産期医療の中核となる「総合周産期母子医療センター」。小児科の医師9人が、24時間態勢で診療に当たり、1か月当たりの当直勤務は8回前後。時間外労働は1人当たり月70〜90時間に上る。部長の畑崎さんでさえ、月6回の当直がある。

 それでも畑崎さんは、「疲れよりもやりがいの方が大きい。赤ちゃんが助かって、順調に育つ姿を見るのが何よりうれしい」と話す。

 県内の新生児医療は危機的な状況で、医師の献身の上に成り立っているとも言える。

 今年4月、小児科医2人が退職した影響で、県内の約2割を占めていた富山市民病院のNICU14床が休止し、今も再開の見通しがたっていない。

 高度医療が必要な母親や新生児を24時間受け入れる周産期の「第3次救急」は、市民病院と富山大付属、県立中央の3病院が輪番で担ってきたが、その一角が崩れ、輪番制は崩壊しかけている。

 これに対応するため、県立中央病院は7月からNICUを5床増やしたが、同病院の今年4〜8月のNICU稼働率は96・3%に達し、ほとんど余裕が無い。これ以上患者が増えれば、「県外への搬送も考えなければならない」(畑崎さん)という状態だ。

 県医務課によると、県内の小児科医は、1998年の133人から、2006年は147人と増加している。しかし、新生児の専門医は現在、5人しかいないため、高度医療を担う医師や病院に負担が集中する傾向にある。医師が辞めた影響で、ほかの医師の負担が増え、さらに医師不足を招く悪循環に陥りかねない。

 富山大医学部の宮脇利男・学部長(小児科)は、「病床の数をそろえただけでは中身は充実しない。分散した小児科を集約化して医療の質を高めれば、勤務状況の改善にもつながり、医学生にとっても魅力に感じるはず」と指摘する。

2008年10月11日  読売新聞)
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