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〔7〕県産材使い家造り

「森林とのお見合い」推奨

伐採見学で樹齢約60年の杉を触る指崎さん(富山市婦中町外輪野で)=細野登撮影

 灰色の杉の幹が曇り空に向かって、すっくと伸びている。富山市婦中町外輪野の水田ぎわに広がる山林。チェーンソーがうなりを上げると、推定樹齢約60年の杉が鈍い音を立てて斜面に倒れた。

 同市塚原の会社員、指崎(さしさき)和彦さん(33)がそばに寄り、年輪が鮮やかに浮き出た切り口をなでた。今年、妻と3歳の長女の3人で暮らすための家を県産材で建てようと考えている。工務店を探したところ、頼成(らいじょう)工務店(富山市)が、県産材を使った家造りでは、まず建材となる木の伐採に立ち会うことを勧めていた。

 「誰が育てて、誰が切ったかわかる木を使う方がいい。安心だし、何より愛着がわく」。なぜ、伐採に立ち会うべきかを実感したという。

 「森林とのお見合い」――。同工務店が所属するNPO法人「とやまの木で家をつくる会」では、家を建てる前に施主が木を見に行くことをこう呼んでいる。1960年代までは、近くの木で家を建てるのはごく当たり前だった。「山の持ち主にとっても、お客さんの顔が見えるから安心できる。こうして木を使うことが、山林の手入れにもなる」。同工務店の安田信夫社長(57)は、この“古くて新しい”家造りの大切さを説く。

 ただ、実際に自分の家に使う木の伐採に立ち会うのは難しい。県産材のほとんどは、乾燥に時間がかかる杉。伐採は冬に行うことが多く、よほどゆとりのある日程でなければ、タイミング良く伐採時期に居合わせることはできない。昔は1、2年かけて家を建てていたので、完成するまでに自然に乾燥ができていたという。最近の家の建て方だと、あらかじめ伐採した木材を使わざるを得ない。

 それでも、同工務店があえて山林を見ることから始めるのは、「家の材料となる木に愛着を持ってもらいたい」との思いからだ。木は工業製品ではなく、命ある生き物。「自分が生まれる以前から生えている木を切らせてもらっていると知ることは、家を大事に扱うことにもつながる」。安田社長が力説した。

□ ■ □ とやまの木で家をつくる会は林業家や製材所、建築士、工務店などを会員に、2000年に発足。戦後、県内で植林が進められた杉は半世紀を経て伐採に適した時期を迎えている。だが、安い輸入材に押され、地元産材の利用は低迷。山林は枝打ちなどの手入れをされないまま放置された。「県産材の利用が進めば林業も盛んになり、健全な木が育つようになる」と建築士の池田通則会長は強調する。

県産材の杉を使い、吹き抜けになっている本郷さん宅

 行政もこうした動きを後押しする。県は昨年、県産材を使った家造りに1戸当たり70万円まで補助する事業を行った。30戸の募集に対し、応募は98件に上った。

□ ■ □ 福祉施設職員の本郷行康さん(38)夫婦は同会のホームページを通じて頼成工務店を知り、一昨年5月、同市婦中町外輪野に家を建てた。

 屋根まで吹き抜けになった居間。タイミングが合わなかったため、伐採には立ち会わなかったが、むき出しの梁(はり)や柱、フローリング、2階の手すりも県産の杉を使っている。家を支えるどっしりとした大黒柱は樹齢約80年の杉。これだけは岡山県産だ。

 「なるべく木をいっぱい見せるように建ててもらった」と本郷さん。杉材は空気を多く含むため、肌触りが軟らかい。「床の温かさが違う。前住んでいた家はフローリングが冷たくて、スリッパを履かないといけなかった」。パチパチと音をたてて家の中をやわらかく暖める、まきストーブの前で本郷さんは語る。

 完成するまで毎日のように通い、壁塗りも自分でやった。「外国で取ってくるより、近くに生えている木を使って建てるのが普通のこと」と思う。杉は家になった後も少しずつ乾燥が進み、梁などにひびが入ることもある。「最初の1年は、何度も『ピシッ』と鳴っていた。でも気にはなりません」。木は生きている――。本郷さんは、暮らしにぬくもりを与えてくれた木を、愛着を込めて見渡した。

2011年1月8日  読売新聞)
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