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夫婦で言葉補い合う

ロシア料理「レバーケーキ」
パソコンで遊ぶ長男暖ちゃんを見守るイリーナさんと祥司さん

絆を深めた国際電話 大学通いで日本と往復
 県職員で外務省に出向していた永寿(えいじゅ)祥司さん(36)(鶴岡市文園町)がロシア・ハバロフスク市の日本総領事館に派遣されたのは一九九四年。言葉はもちろん、右も左も分からぬ土地に不安が募り出したころ、玄関にすらりとした美女が現れた。身の回りの面倒を見てもらおうと雇ったロシア人の家政婦だった。

 現在の妻イリーナ・クロチェンコさん(28)は、買い物や掃除はもちろん、昼食には手作りのお弁当まで用意する献身ぶりを見せた。ドラマのような出会いをした二人だったが、当時はあくまで雇用者と被雇用者の関係。言葉を交わさずとも互いの性格や仕事を理解しあう間柄になりながら、常に別れの予感がつきまとっていた。「ボーイフレンドはいなかったけど、結婚するなんて全然思っていなかった」。そう振り返るイリーナさんのロシア語を祥司さんがうなずきながら日本語に訳していく。

     ◇

 二年後、外務省への出向が終わり、祥司さんは九六年四月に帰国。その後、国際電話で連絡を取り合う仲となり、その度に絆(きずな)は深まっていくような気がした。「どこかで淡い思いはあったのかもしれない」。祥司さんは照れるが、その一方で「結婚するとして、自分が彼女の日本での生活を背負えるか真剣に考えました」とも明かす。

 九七年秋、祥司さんはついに鶴岡市の実家にイリーナさんを招き、初めて父母と対面させた。そして新潟空港まで送る車の中で、ぎこちないロシア語で打ち明けた。

 「ずっと一緒にいてほしい」――。

     ◇

 「なんて言われたか、よく覚えていない」とイリーナさん。「でも言葉が重要なのでなく、ずっと思ってくれたことがうれしかった」。

 異国の地に嫁ぐことをロシアの親類たちは心配したが、イリーナさんの決意は固かった。「一緒に過ごして相手の人間性はよく分かっていた。うまくいかなかったら、帰ればいいだけだし」。九八年五月、二人は入籍した。

     ◇

 結婚したものの、祥司さんのアパートに妻がいつもいるわけではない。イリーナさんはロシアの大学に通っており、一年の三分の一は祥司さんの元を離れている。今年も授業開始に合わせ、六日にはロシアに戻った。卒業は来年の予定だ。

 ただこれも学歴社会の日本で暮らす上で必要だろうと、結婚後、本人が希望したものだ。専攻は日本語。既に買い物程度なら苦労しないレベルにまで達している。

 「モット、ニホンゴデ、ハナシタインデス」。長男暖(だん)ちゃん(1)をあやしながらロシア人妻の口から日本語が飛び出した。それに続くロシア語を夫がうれしそうに訳してくれた。「これからも困難な問題に直面するでしょうが、その都度二人で解決していけばいい。今は大きな家に引っ越して家族をもっと増やしたい」

【料理メモ】

 〈1〉適当な大きさに切った牛レバーとタマネギ、ゆでたニンジンに、卵と小麦粉を加え、フードプロセッサーでピューレ状にする〈2〉〈1〉をお好み焼き程度の大きさにフライパンに広げて焼く〈3〉1枚ずつマヨネーズを塗って重ね、全体にケチャップをかける。

 ロシアでは各家庭でよく食べられるごちそうで、レバー嫌いの子どもにも人気がある。家ごとに隠し味が異なり、イリーナさんも祖母から作り方を教わったという。冷やして食べるとまたおいしい。


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