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プロが厳選売り込む

庄内産の食材

 旧藤島町産トマトのカプレーゼ、庄内浜で水揚げされた魚介のスパゲティ、旧立川町産小バトのロースト、旧朝日村産ハチミツのジェラート……。鶴岡市のイタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」では、前菜からデザートまですべてのメニューを地元産食材で作る。シェフの奥田政行さん(36)は自らの舌で味わって厳選した素材を、40軒を超える契約農家から集める。

 奥田さんが、庄内産の食材を首都圏や仙台などのレストランに売り込み始めてから4年。一般的な野菜から「藤沢カブ」などの在来野菜、魚介類や畜産品までを持って、これまで約50軒を訪れた。「料理人が料理人に売り込んだ食材は、百発百中で気に入られる」


写真:写真説明
契約している畑で、冬場でも栽培されているアスパラ菜を摘む奥田さん(昨年12月、鶴岡市内で)
 売り込みを始めたきっかけは、羊だった。2002年2月、常連客に勧められた旧羽黒町の羊を食べて驚いた。「脂っこく臭い輸入羊とは次元の違うおいしさ。味のバランスが良く、嫌みがない」。すぐさま生産者の丸山光平さん(58)を訪ねた。しかし、「地域で羊を作っているのは自分だけ。やめようかと迷っている」と打ち明けられた。

 輸入羊との違いは餌にあった。丸山さんはトウモロコシや大豆に加えてだだちゃ豆のさやを与え、臭みのない日本人好みの羊を育成していた。

 「これだけの食材を絶やすわけにはいかない」。慌てた奥田さんは店のメニューに加えたが、売れる量は限られている。雑誌などで知った東京・広尾のイタリアンレストラン「ACCA(アッカ)」に持ち込んだ。ACCAのシェフ林冬青さん(40)は当初、縁もゆかりもなかった奥田さんと羊をいぶかしげに見比べた。ところが、口にするなり顔をほころばせた。羊のローストなどのメニューは瞬く間に看板メニューとなった。

 全国的なジンギスカン鍋ブームもあり、丸山さん方には注文が殺到、購入は順番待ちだ。年間出荷量は、3年で5割増しの120頭ほどに。丸山さんは「奥田さんに声を掛けられるまで、羊が県外にも売れるとは知らなかった。経営はまだ厳しいが、生産は続ける」と意欲を取り戻した。

 「地元農産物の販路拡大は、生産者も消費者も料理人も、みんなが喜ぶことになる」。奥田さんはこの一件で実感した。それ以来、県内の生産者を訪ねては食材を探し続ける。04年には県が「食の親善大使」を委嘱、奥田さんのフットワークに“便乗”した。

 「庄内農産物を東京や仙台で食べた客が、『本物を食べたい』と庄内地方にやってくるのが理想」。県外を回る合間に厨房に立つ奥田さんは今、こう考えている。

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 東京都内でいち早く、豊富な県産食材に注目したのは「ホテルイースト21東京」(東京都江東区)だった。大相撲・佐渡ヶ嶽部屋が定宿にしている縁で、ホテルマンたちは尾花沢市出身の元関脇・琴ノ若関(現・佐渡ヶ嶽親方)とも交流を深めた。営業企画課長の西川尚澄さん(45)は、「山形には、あまり手を加えずに食材のおいしさを生かせる農産物がそろっている」と言う。

 ホテルでは2000年から毎年、県産食材を和・洋・中にアレンジする「山形県フェア」を季節を変えて開催。サクランボや食用菊、山形牛、ハタハタといった旬の食材を各レストランが競って活用し、舌の肥えた客を楽しませている。

 ホテルに生産農家を紹介した県生産流通課は「様々な農産物の認知度を上げれば、『山形』という産地全体のイメージが高まる。農産物をパッケージ化した売り込み策を広げたい」と展望を話す。

 【食の親善大使】 「食の都庄内」のブランド定着を図る県庄内総合支庁が2004年度に始めた制度で、現在は奥田政行さんら料理人3人を委嘱。親善大使は、吹浦漁港の岩ガキなど庄内の食材を現地調査したうえで、首都圏などの料理人に魅力を伝える活動を行っている。「観光親善大使」は全国で増えているが、食に特化した親善大使は珍しい。

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