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【7】「理不尽」県警の回答疑念なお「官邸でお会いしましたよね」。衆院議員の小野次郎(55)が右手を差し出すと、特定失踪(しっそう)者問題調査会代表の荒木和博(52)は「あ、そうでしたっけ」と席を立ち、握手を交わした。 4月26日、特定失踪者・山本美保の実家に近い甲府市西部市民センターの一室で、二人が7年ぶりに再会した。 2002年3月19日、拉致被害者の家族たちが小泉首相と首相官邸で初めて面会した時に居合わせていた。当時、小野は小泉首相の秘書官、荒木は「救う会全国協議会」事務局長だった。二人は特に会話は交わさなかったが、互いの存在は知っていた。 この日は、小野の支持者が「少しでも力になれば」と、小野と、美保の支援者らを引き合わせた場に、荒木が訪れたのだった。 警察庁出身の小野は、秘書官時代を踏まえ、美保の問題を「数多い拉致問題の中の一つ」という認識を示した。美保の支援者たちが資料を示しながら説明すると、「これは拉致の可能性があるね」と感心したようにうなずいた。 「家族が納得できるように何とか力になりたい」。3時間半に及ぶ「陳情」に、小野はそう応えた。荒木は「真相が明らかになる足がかりになれば」と思った。 ◇ 「忘れない、あきらめない、北朝鮮による拉致問題!」――。JR甲府駅前で7日に行われた自民党県連の街頭活動。テーマは拉致問題だった。「県内にも特定失踪者はいる」。県連関係者たちは次々に演説したが、「山本美保」の名前はついに出なかった。 県警が、山形で見つかった遺体が美保と確認されたと発表した04年3月以降、30万人近い署名を集めた救出運動は幻だったかのように潮を引いていた。「もう終わったことでしょう」。県連関係者の中にもこんな声が聞こえてくる。 警察当局は発表当時、「美保は失踪直前に進路などで悩んでいた」と自殺の可能性を指摘していた。県警は今も、身元確認の根拠としたDNA鑑定結果は「否定しようがない重い事実」との認識は崩していない。そのうえで、「死亡に至る経緯」を捜査すると家族らに説明している。 だが、疑問は尽きない。 山形の遺体の死後経過と、失踪後の状況が矛盾するのはなぜか。美保とサイズの異なる遺留品の下着。失踪直後から実家へ4年半も続いた無言電話、北朝鮮の元工作員たちの目撃証言。自殺なら、なぜ縁もゆかりもない新潟県柏崎市の海岸を最期の場所に選んだのか――。 県警が4日、美保の家族らに示した回答書には、どの問いにも合理的な説明がされていないままだ。 横内知事は9日の定例記者会見で、県警の回答書について、「県警としてできるだけ疑念が晴れるように努力してもらいたい」と述べた。 県議会の中でも今月下旬に開会する6月定例議会で取り上げる動きが出てきた。「県民がこんな理不尽なことで苦しんでいるのに直視しないわけにはいかない」。ある県議はこう話す。 妹の森本美砂(45)は、美保との思い出が詰まったアルバムを見てつぶやく。「どうか『美保死亡』を取り消してもらえないでしょうか。誰かを責めるなんて気は毛頭ありません。私はただ姉と再会したいだけなんです」(敬称略、おわり) (この連載は矢牧久明、池田寛樹が担当しました) (2009年6月11日 読売新聞)
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