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連載・特集
富士山の「先輩」たち
中心部保護、活用は周辺で

写真:写真説明
行列を作って白神山地の森の中を散策するツアー客

 人口約二千人の青森県西目屋村には、白神山地の世界遺産指定地域で唯一の遊歩道がある。

 静かな山村は、“世界遺産効果”で、瞬く間に観光名所に様変わりした。サンダルやスカート姿で訪れるツアー客もいて、「こんなに道が険しいなんて」といった悲鳴が森に響く。駐車場には観光バスが列をなすが、ほとんどは二時間ほどで次の目的地へ走り去る。

 村の観光客数は、九三年の遺産登録前には年間約二万人だったが、今は五十万人を超える。村の第三セクターが運営する宿泊施設の支配人、木元英治さん(51)は「ほんの足元を見るだけのツアーでは、白神の良さはわからないのに……」と嘆く。

 人の集中でブナの根の踏み荒らしやごみの散乱も問題化。村の入山口では今年から、一人三百円の環境保全協力金を本格的に徴収するようになった。

 白神山地近くの自治体は、激増した観光客の受け皿整備に必死だ。西目屋村の隣の鯵ヶ沢町は九五年から、遺産地域の北側約二十キロのブナ林五十二ヘクタールを「ミニ白神」として開放し、ガイドツアーを始めた。

 国有林が全域を占める遺産地域には複数の法の網がかかっているため、地元自治体といえども、自由に開発することは許されない。一方、周辺のブナ林は一部を除いて規制がなく、その活用が地元自治体の課題となっている。

 日本自然保護協会の吉田正人常務理事(46)も、「遺産地域の中だけを守っていては世界遺産としての意味をなさない。自然の価値を外に広げていくことが大事」と指摘する。

 青森県は今年、遺産地域周辺を新たに県立自然公園化する構想を打ち出した。周辺のブナ林を法的に守りつつ、観光客の分散化を図るのが狙いで、秋田県も同様の考えを持っている。青森県は「以前は入山問題の議論そのものがタブーだったが、方向づけをする時期がきている」(自然保護課)とし、周辺を含めた利用計画を見直す方針だ。

 二十年前まで誰も見向きもしなかった森が世界遺産となる。一方、富士山は国内候補地にも残れなかった。この現実は何を物語るのか。青森、秋田両県の関係者は「世界遺産は手をつけないのが原則」と口をそろえる。核心地域は保護しつつ、周辺部分の観光利用などを図るのが白神山地で進む世界遺産の活用だ。

 「富士山に、果たして核心地域を設定できるのか」。両県の関係者はそんな疑問を投げかけている。(おわり)

 (この企画は、静岡支局・高橋雄介と、甲府支局・宮地美陽子が担当しました)

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