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教育重視

見えぬ将来ビジョン

 「先生、聞いて」

 「見て、出来たよ」

 教室のあちこちから、一斉に無邪気な声が上がる。作文を書く甲府市立山城小2年1組の児童たち。担任の岡林和香子教諭(44)は、子供に接しながら、机に向かう姿勢や受け答えにも気を配る。いじめや不登校などの兆候を見逃さないためだ。授業を終えた岡林教諭は「この人数なら、余裕を持って接することが出来ます」と笑顔を見せた。

 2年1組は児童27人。児童40人を1学級の上限とする国の基準に従えば、同学年は児童総数から1クラス36人の計算となる。ところが、県が進める「30人学級制」により、1クラスの数が抑えられたのだ。保護者からは、上の学年になってもこの制度を続けてほしいという要望が相次いでいる。

 「30人学級」を導入したのは山本知事だ。2004年度、一定の条件を満たす県内の小学1、2年生で導入された。国の基準を上回る教諭配置(加配)にかかる人件費は、原則として県の負担となるため、県独自の教育支出は04年度以降、以前の2・5倍の年間約5億円に膨らんだ。知事はそれでも、「教育に金を惜しんだらいかん」と繰り返す。事実、教育費は03年度に土木費を上回り、新年度当初予算案でも970億円に上り、用途別の歳出額ではトップを維持する。教育重視は、2003年2月に船出した山本県政の最大の特徴でもある。

 だが、国と地方の税財源を見直す三位一体の改革の影が、教育界にも忍び寄っている。改革で、教諭の人件費の国庫負担は新年度以降、半額から3分の1に引き下げられる。現状では、差額は全額、国から補てんされるが、将来的に「補てん分は減額され、教育人件費が県財政を圧迫する可能性が高い」(県教委幹部)と見る。県財政も年々、県の基金=メモ=を取り崩して歳入不足を補う状態が続いている。

 こうした現状の打開策として、小規模校の統廃合を挙げる声もある。県内では、1学年の児童・生徒数が20人を下回る小中学校は約70校ある。県が市町村教委と連携し、統廃合を実現させた場合、人件費の経費節減額は、1校当たり年間数千万円との試算がある。

 事実、秋田県は05年度以降、統廃合を決めた小中学校に50万円の補助金を出しており、今後10年間で46校が統廃合を決めている。数百人単位で教諭を減らす見通しが立っている。一方で、40億円を投じ、小学1、2年生、中学1年に「30人学級」を導入、「合理化と教育の質の向上」(同県義務教育課)が進んでいる。

 山本知事は今月、読売新聞のインタビューに対し、「教育問題をおろそかにしたら国は滅びる。県も滅びるよ」と強調した。だが、山梨県では、統廃合も含め、将来を見据えた具体的な議論が熱を帯びているとは言い難い。県教委関係者は「教育費を無限に支給出来るはずはない」と議論の必要性に言及するが、原則、教諭の人件費負担のない市町村には県ほどの危機感は見受けられない。

 県の基金 年度によって増減する歳入、歳出の不均衡を調整するために使えるのは、財政調整基金、県債管理基金、公共施設整備等事業基金の3基金。本来は、財源に余裕がある年度に積み立て、自然災害による予想外の支出や突然の税収減などに備えるのが目的だった。しかし、三位一体の改革などによる財源不足を補うため、2002年からは毎年3基金を計100億円以上取り崩して、予算編成するようになっている。06年度も140億円を取り崩す予定で、06年度末の残高は364億円。過去最高だった92年の726億円から半減する見通しだ。

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