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    クロツラヘラサギ守れ

     絶滅危惧種の水鳥、クロツラヘラサギを、釣り糸による被害から守る活動が各地で広がっている。

     近年、九州や沖縄県への飛来数が増え、放置された釣り糸や針でけがをしたり、死んだりするケースが目立つようになったためだ。保護に取り組む市民を支援しようと、環境省もネットワーク作りに乗り出した。

    救出、2世も

     「我々が救護したクロツラヘラサギが、韓国に戻って繁殖しました」

     熊本市で7月下旬に開かれた「日本クロツラヘラサギネットワーク報告会」。沖縄県から参加した「沖縄野鳥の会」の山城正邦会長(51)が、救護の成功事例を報告した。

     2012年3月、同県南部の干潟でクチバシに釣り糸が絡まった一羽が見つかった。足には「K96」という標識があり、「10年6月に韓国・仁川市の人工島で生まれたメス」と判明。標識の確認記録から、同年秋に福岡、熊本を経由して飛来し、沖縄にとどまったものと分かった。

     長いクチバシを水中に入れて魚やカニなどを探す際に糸が絡まったとみられ、くちばしが閉まらず、動きも悪くなっていた。1週間後にタモ網で捕獲、動物病院で針と糸を取り除き、3日後に放鳥した。

     その後沖縄では見られなかったが、韓国の保護グループからの連絡で、今年6月に生まれ故郷の人工島で巣作りし、ひなが生まれたことが分かった。「秋にまた沖縄に渡ってくるのが楽しみ」と山城さんは話す。

    飛来数増加

     クロツラヘラサギは、東アジアのシンボル的な野鳥として、繁殖地の韓国や越冬地の台湾、香港などで野鳥愛好家に親しまれている。日本でも1980年代半ばから越冬するようになり、今年1月には九州、沖縄などで350羽が確認された。

     一方、飛来数の増加で、自転車やタイヤなどのごみにぶつかってクチバシや足を折ったり、釣り糸に絡まって餌が取れなくなったりする被害も目立ってきた。

     報告会を主催した「日本クロツラヘラサギネットワーク」(事務局・福岡市)によると、九州・沖縄県で05年以降、けがや衰弱などが確認されたのは29例。そのうち釣り糸やルアーなどの被害は13例だった。うち5例はその後の消息は不明で、5例は死んだ。捕獲して放鳥に至ったのは、沖縄県の3例にとどまった。

    官民協力で

    • 環境省が制作した啓発ポスター
      環境省が制作した啓発ポスター

     救援の取り組みも深まっている。環境省九州地方環境事務所は7月、釣り糸を捨てないよう呼びかけるポスターとチラシ、キーホルダーを作成。救護のノウハウを各地の愛鳥団体などに共有してもらおうと、同ネットワークに報告会の開催を呼びかけた。

     沖縄県では、05年に釣り針が足に刺さった1羽が死んだ事例などをきっかけに、野鳥の会や獣医師、県などが連携し、迅速な救護に取り組んでいる。

     衰弱して飛べなくなるとすぐに死んでしまうため、まだ飛べる体力のあるうちに追跡して捕獲し、治療する。また今年3月に、けがをした鳥が米軍施設内で見つかった際は、環境省が米軍に立ち入り要請を行った。

     一方、福岡市のNPO法人「ふくおか湿地保全研究会」では、釣り業界を目指す人の専門学校で講義を行い、野鳥の釣り糸被害の実態を伝えている。学生らと一緒に、クロツラヘラサギが立ち寄る干潟や川などの清掃活動も行っており、一度に50個ほどのルアーを回収することもあるという。同研究会の服部卓朗理事長(58)は、「水辺の生物多様性を守ることの大切さを知ってもらい、釣り糸を放置する人を減らすことで、被害の予防を目指したい」と意気込む。

     今後、同省はこうした取り組み事例をまとめ、各地のグループに情報提供していくという。同省九州地方環境事務所の山本貴二課長補佐は「地域住民や専門家、行政が連携して、保護のネットワークが広がるよう支援したい」と話している。(玉城夏子)

    クロツラヘラサギ
     トキ科に属し、しゃもじのような黒いクチバシが特徴。体長約75~80センチで、体は白い。東アジアのみに生息し、約2700羽しか確認されていない。3ランクある絶滅危惧種のうち、2番目に深刻な1B類に指定されている。

    2014年08月18日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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