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    モスクワ ごみ処理改革へ

    脱埋め立て、分別回収開始

    • モスクワ最大のごみ焼却施設では、生ごみや紙、プラスチックなどが一緒に燃やされていた
      モスクワ最大のごみ焼却施設では、生ごみや紙、プラスチックなどが一緒に燃やされていた
    • オーストリアのごみ焼却技術を用いて建造されたモスクワ最大のごみ焼却施設
      オーストリアのごみ焼却技術を用いて建造されたモスクワ最大のごみ焼却施設

     ロシアの首都モスクワで、ごみ処理の改革が喫緊の課題となっている。

     経済発展で家庭ごみが増えた上、市域も拡大し、埋め立て処理だけに頼れなくなっているからだ。ごみの分別収集も始まったばかりだ。市は新たな焼却場建設などを進めたい考えで、日本企業も参入を図ろうとしている。

    最新施設

     モスクワ中心部から車で約45分。マンション群が1キロほど先に見える平原地帯に、市内最大の「第3廃棄物焼却場」がある。オーストリアのごみ処理技術で2008年に建造された最新の焼却場だ。化学物質を最小限まで除去してから煙を放出し、灰は建築資材に再利用している。

     副所長のオレグ・タスカノフさんは「これだけの最新施設はロシアには、ほかにない。有害物質を放出するのではないかと、焼却場を嫌っていた住民からの苦情もなくなった」と胸を張った。

     そんな最新施設なのに、「生ごみや紙ばかりでなく、乾電池やビン、缶、プラスチックも全て一緒に燃やしている」という職員の説明を聞いて驚いた。ごみを分別する習慣が根付いていないためだ。焼却後、燃え残った缶など不燃物を取り除いているという。

    焼却場3か所

     人口約1200万人のモスクワに、焼却場はわずか3か所しかない。焼却できる総量も年80万トンに満たない。

     政府によると、モスクワの家庭ごみの総量は年約550万トン(11年)。ほとんどのごみは、そのまま埋め立てられている。広大な領土を持つロシアでは、「捨てる場所はいくらでもある」という意識が強い。そんな考えも、埋め立て頼りの要因になっていると考えられている。

     埋め立て地周辺では、異臭問題が絶えないばかりではない。環境団体「グリーンピース」は、ごみから出る汚水が地下水に流れこむことによる健康被害も懸念する。放射性物質を含んだ医療機関からのごみも紛れていることもある。モスクワ郊外はベッドタウン化が進み、埋め立て地が中心地から遠ざかっているという問題もある。

     政府は、ごみ処理を「放置できない問題」(住宅サービス省)としてモスクワ市などに対策を要請。昨年、ごみを分別し、リサイクルやリユースを向上させようと、その費用を生産者らが支払う法律を成立させた。現在、運用開始に向けた手続きが進む。

     モスクワでは部分的にごみの分別収集が始まっているものの、本格的には行われていない。調査会社の担当者は「ロシアはごみを減らすための具体像がまだ描けていない」と指摘した。

    日本参入の壁

    • 日本のごみ処理技術や回収の仕組みの説明を熱心に聞くロシア人参加者ら
      日本のごみ処理技術や回収の仕組みの説明を熱心に聞くロシア人参加者ら

     「技術協力や地元業者の育成に配慮し、安全に運営させていただきたい」。焼却場建設技術を持つ日本企業の担当者らが3月5日、モスクワでごみ処理に関するセミナーを開いた。ロシア側の行政担当者や処理業者の幹部ら約40人が集まった。

     日本企業がモスクワのごみ処理参入に期待をかけるのには理由がある。13年春に安倍首相とプーチン大統領の日露首脳会談で、ごみ問題を含めた「都市環境」分野で両国の協力を進めることを首脳レベルで合意、省庁も企業参入を後押しするからだ。日本側は企業の技術に加え、リサイクル制度や法体系、安全性をアピールするノウハウも含めた売り込みを図ろうとしている。

     ただロシアのごみ処理の受注は欧州企業が先行している。セミナーに参加したモスクワのごみ処理業者アレクサンドル・オドロフさんは「日本の技術も制度も優れているのはわかったが、欧州の方がこれまでの協力関係もあり、事業を進めやすいのではないか」と話した。

     日本貿易振興機構(ジェトロ)の服部隆一モスクワ事務所長は「ロシアのごみ処理ビジネスは規模も大きく魅力があるが、距離も近く、付き合いも長い欧州勢に割って入るのだから厳しい受注競争になるだろう」と予測する。(モスクワ 田村雄、写真も)

    日本のノウハウ 途上国へ

    ごみ出しルール、収集車提供

     世界のごみは増え続けている。経済発展や人口増が背景にある。廃棄物の調査などを行っている「廃棄物工学研究所」(東京都)によると、2010年の世界のごみ発生量は104・7億トン。50年には223・1億トン(いずれも推定値)に達すると見込む。こうした中、日本は、アジアを中心とした途上国のごみ問題解決を支援している。

     「決められた時間と場所にごみを出す習慣がなく、街中にごみがあふれていた。経済発展に伴うごみ問題は日本も経験してきた。培ってきたノウハウを世界に広めたい」。バングラデシュの首都ダッカを支援している国際協力機構(JICA)環境管理第1チームの村瀬憲昭さん(44)はこう話した。

     ダッカの家庭ごみは1日約5000トン。多くのごみが道ばたに捨てられていた。00年に支援を始めたJICAは、市と共同でごみ出しのルールを作り、これを住民に広める担当者の教育を行った。日本で使われているのと同型の収集車100台も提供した。

     その結果、市内の家庭ごみ収集率は約40%から65%へと上昇した。こうしたJICAのごみ支援は、05~11年度で69か国に上るという。

     環境省は、ベトナムでの対策を支援している。ベトナム政府と13年に環境協力に関する覚書に署名。職員を派遣して廃棄物処理に関する法整備を後押しするなどしてきた。

     ベトナムでは年1300万トンの家庭ごみのほとんどが、そのまま埋め立てられてきた。だが近年は処分場が不足。ごみを減らすために焼却場建設が急務となっており、日本のプラントメーカーも参入を計画している。環境省は、焼却場建設にあたって有害物質の排出基準作りなどを助言する考えだ。同省は「しっかりした制度を作ることで、日本企業が進出しやすい環境作りにもつながる」と話した。

     一方、東京23区のごみを処理している「東京二十三区清掃一部事務組合」は、14年までの3年間で45人のマレーシア政府職員を受け入れて研修を行った。首都クアラルンプールの自治会を招き、ごみ分別に取り組んでいる都内の自治会との交流事業も実施した。

     組合によると、マレーシアでは今秋から家庭ごみの分別収集が導入されるという。市民の関心も高まっているといい、都内で昨年11月行われた交流事業で、マレーシアの一行は徹底した分別の現場などを視察した。

    2015年03月30日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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