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    古着や藻から航空燃料

    石油の代用 CO2抑制

     古着や、工場から出る廃液、藻などを原料にした航空機用燃料の開発が国内で活発化している。「バイオジェット燃料」と呼ばれ、石油の代わりに使用することで、航空機から排出される温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)の抑制につながると期待されている。

    微生物を活用

     「自分の古着がジェット機を飛ばす燃料になると思えば、リサイクル意識も高まるでしょう」。千葉県木更津市にある環境関連の新興企業「グリーン・アース・インスティテュート」(GEI、東京)の研究所。伊原智人・最高経営責任者(CEO)(48)は実験装置を前にそう語った。

     GEIは2016年から、日本航空やリサイクル関連企業「日本環境設計」などと、綿製の古着からバイオジェット燃料作りを進めている。利用するのは、水鳥のフンで見つかった「コリネ菌」という微生物だ。

     燃料作りの仕組みはこうだ。まず全国約1500の衣料品店などを通じて古着を集める。次に古着の綿から糖を取り出してコリネ菌の培養タンクに入れる。この菌が糖をアルコールに分解し、アルコールから燃料が精製される。

     伊原さんは「綿100トンから10キロ・リットルのバイオジェット燃料が作れる。CO2の排出量は石油燃料の半分以下だ」と強調する。この技術を使えば、古着以外にも製紙工場の廃液からも燃料を生み出せるという。

    2019年頃に試験飛行

     微生物の一種の藻の中には、太陽の光をもとに光合成で大気中のCO2を吸収し、体内に油を作る種類がいる。環境関連の新興企業「ユーグレナ」(東京)はこれに着目。全日本空輸などと協力し、「ミドリムシ」と呼ばれる藻から燃料の生産を目指す。ユーグレナが用いるミドリムシは光合成により全体重の約30%分の油を作れるという。

     同社は今夏にも、大量培養したミドリムシから年間125キロ・リットルの燃料を精製する実証施設を横浜市に着工する。全日空はそこでできた燃料を石油由来の燃料に混ぜ、19年頃に試験飛行を行う予定だ。ユーグレナの永田暁彦取締役(34)は「油の搾りかすは肥料や飼料にもなる。無駄がなく環境に優しい」と胸を張る。

     新エネルギー・産業技術総合開発機構も重工大手「IHI」(東京)に委託し、体重の50%程度の油を体内に作る藻「ボトリオコッカス」から燃料を開発中だ。培養中に藻が自然と集まるように改良したといい、同機構の生田目修志・統括研究員(54)は「回収に手間がかからず、実用に向いている藻だ」と話す。

    コストが課題

     バイオジェット燃料の開発が進むのは、国際民間航空機関(ICAO)が10年、国際線のCO2排出量を21年以降は増やさないというルールを決めたからだ。国土交通省によると、国際線のCO2排出量は全世界で年間5億トン超で、航空需要は増え続けており、何も対策を講じなければ、30年には10億トンを超える見通しだ。

     このため、CO2排出量を頭打ちにする切り札としてバイオジェット燃料への期待は大きい。政府も20年の東京五輪・パラリンピックで、選手や訪日客らが移動する航空機に、この燃料を使ってもらい、普及に向けてアピールする考えだ。

     民間調査会社「富士経済」(東京)は、バイオジェット燃料の世界の市場規模は、15年の4兆2000億円から、30年頃には18兆円規模に膨らむと予測する。価格が石油由来の燃料に比べて5倍以上高いのが普及する上での大きな課題だが、資源エネルギー庁の担当者は「大量生産の体制が整えば価格は下がるだろう」と話す。(笹本貴子)

    2017年02月13日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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