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    被災3県 学校に発電設備

    非常時の電源確保 震災後3倍超に

     太陽光などの自然エネルギーを使った発電設備を備えた学校が増えている。

     作られた電気は校内で使われるほか、停電時には防災無線などの非常用電源になる。東日本大震災で被災し、大規模な停電が発生した岩手、宮城、福島の3県では、発電設備を備えた小中学校数が震災前の3倍以上になっている。

    太陽光、地中熱・・・平常時は節電効果

     海から約4キロ離れた仙台市若林区の七郷中学校。体育館の用具室には高さ2メートル、幅1・5メートルほどの金属製の箱が置かれている。太陽光パネルで発電した電気をためる大型の蓄電池だ。「今の発電は7・8キロ・ワット。きょうは晴れているので順調ですね」。蓄電池の前面に付いた液晶画面で発電状況を確認した仙台市防災環境都市推進室の加藤博之課長がうなずいた。

    • 中学校の校舎屋上に設置された太陽光パネル(1日、仙台市若林区で)
      中学校の校舎屋上に設置された太陽光パネル(1日、仙台市若林区で)

     太陽光パネルは、体育館の隣にある校舎の屋上に設置され、ケーブルで蓄電池とつながっている。停電が発生すると、蓄電池から体育館に電気が送られ、天井の照明2か所、非常用コンセント3か所が使用できる。防災無線やテレビが使えるほか、携帯電話の充電も可能。曇りや雨などで発電量が少ない日が続いても、蓄電池だけで「数日分の電気を確保できる」(加藤課長)という。

     平常時には、太陽光パネルで作った電気は教室の照明などにも使われる。電力会社から買う電力量が減り、日常的な電気代削減にもつながるという。

     仙台市は6年前の震災時、沿岸部が津波により大きな被害を受けたほか、市内全域で3日間ほど停電が発生した。避難所となった小中学校に地域住民が集まったものの、照明も暖房も満足に使えなかった。

     震災時は別の中学校に勤務し、避難所運営にあたったという七郷中の渡辺哲也教頭は「テレビもつかなくて情報が全く入ってこなかった」と振り返る。防災無線が配備されていたものの、充電はすぐに切れ、市役所とも音信不通になった学校も多かったという。

     同市は避難所となる学校の電源確保が急務と判断。2015年度までに市内の指定避難所194か所すべてに太陽光発電と蓄電池を配備した。総費用は約58億円で、すべてを環境省の補助金で賄ったという。

     地域住民を巻き込んで、避難所の開設訓練などを続けている同市若林区の菅井茂さん(72)は、「最低限でもあかりがあれば、避難してきた人たちが安心できる。避難所内の犯罪の心配も減る」と、電源確保の取り組みを評価する。

     学校に導入される設備の多くは太陽光発電だが、一部では風力や地中熱などの利用も進む。岩手県北部の軽米町にある軽米小学校には14年、地中熱利用設備を備えた新校舎が完成した。同町の1月の平均気温はマイナス2・9度。寒さは厳しいが、校舎内は室温20度前後に保たれており、冬場でも児童たちは半袖姿になることがあるほどだ。

     秘密は校舎の地下にある。長さ約100メートルのチューブが38本も縦に埋め込まれている。チューブに不凍液を循環させ、地中の熱を取り出す仕組みだ。同校では地中熱で作った温水を循環させて校舎内を暖めており、夏には地上より地中の温度が低くなることを利用し、冷水を作って循環させ、冷房代わりにしている。

     6年前の震災では、同町も数日間停電した。震災後に校舎の建て替え計画が具体化する中で、太陽光発電に加えて、地中熱利用の仕組みも取り入れることを決めた。地下の工事やチューブの設置などに約8000万円かかったが、環境省の補助金で賄うことができたという。

     浅倉ほまれ副校長は「エコ面だけではなく、灯油ストーブを使わなくなったので、やけどなど事故の心配をすることがなくなったのもいいことです」と話している。(小林雄一)

    2017年03月20日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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