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    雪国救う?「雪エネルギー」

    冷房や低温貯蔵に活用

    • コンピューターのサーバーから排出される熱を、雪で冷やす実験をしている本間さん(3月24日、北海道美唄市で)=守谷遼平撮影
      コンピューターのサーバーから排出される熱を、雪で冷やす実験をしている本間さん(3月24日、北海道美唄市で)=守谷遼平撮影

     除去するのに労力がかかり、多くの人を悩ませている雪を省エネに活用する試みが広がっている。近年は、企業が「冷房システム」として、道路の除雪で取り除いた雪を使うなどという事例も目立つが、普及には課題もある。


    電力4割減

    • 積み上げられた雪山には、雪が解けないように木のチップが敷き詰められている(3月24日、北海道美唄市で)=守谷遼平撮影
      積み上げられた雪山には、雪が解けないように木のチップが敷き詰められている(3月24日、北海道美唄市で)=守谷遼平撮影

     3月下旬、北海道の内陸部・美唄びばい市の「空知そらち工業団地」。約300平方メートルの敷地の一面に、高さ約5メートルの雪が積み上げられ、断熱材の役割を果たす木質チップがその表面を覆っていた。

     雪の下には、不凍液を循環させるための管が埋まっており、この管をコンピューターサーバーの部屋まで延長。雪で冷やした不凍液を循環させることで、約110平方メートルのサーバー室を冷やす仕組みだ。

     このシステムの研究・開発が始まったのは2014年7月。同市の設計会社・雪屋媚山こびやま商店など5社と室蘭工業大などが、新エネルギー・産業技術総合開発機構とともに手がけたものだ。

     同室で稼働する計150台のサーバーが出す熱は、電子レンジ約50個分という。夏場の室温は35度に達するが、雪による冷房で常時25度に保っている。

     同市は企業のデータセンターの誘致を目指しているが、データセンターには大量の情報をコンピューターで処理するためのサーバー室は欠かせない。

     そこで、同市は12年度に、大型のデータセンターを運用した際の空調費用を試算。その結果、都内にデータセンターを作り、電力会社から電気の供給を受けるケースと比べ、夏でも涼しい同市で雪冷房システムを活用すれば、消費電力は年間約4割減り、電気代が約3億4200万円節約できるとの結果が出た。

     同市の担当者は「データセンターが都会にある必要はない。実験の成果を誘致に向けた武器にしたい」と意気込む。

    冬季は暖房も

     経済産業省などによると、雪をエネルギー源に活用する取り組みは、これまでも北海道や新潟県などの積雪寒冷地で続いてきた。主にコメや野菜などの低温貯蔵や、建物の冷房などが多いという。

     美唄市の事例がユニークなのは、融雪剤や砂などが混じった雪も活用できる点だ。自治体が道路を除雪した際に出る雪をそのまま使うことで、雪を集めるコストを節約できる。野積みにすれば、施設の建設費もかからない。厚さ約30センチの木材チップで雪山を覆うことで、ひと夏を越しても30%程度しか解けないという。

     逆に冬季には、サーバー室で暖まった不凍液をビニールハウスや陸上の養殖施設に循環させ、野菜栽培やアワビの養殖もできるという。同市の外気は冬場は氷点下25度近くになることもあるが、これまでに小松菜やホウレンソウの収穫に成功。アワビも育っている。

    普及に課題

     ただ課題もある。「燃料」として活用する雪の置き場は、行政の雪捨て場をそのまま使うことが想定されるなど、候補地が限られる。農地が近くにある場合、冷気が流れ出ないように断熱を徹底するなどの配慮も欠かせない。雪が少ない年は、自費での雪集めを余儀なくされる可能性もあるという。

     雪屋媚山商店の本間弘達社長(48)は「雪のエネルギーを活用するには、行政との協力が不可欠だ」と語る。(黒田高史)

    2017年04月24日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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