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    アカモク 海も健康も守る

    「厄介者」が人気商品に

    • アカモクの刈り取り作業。10分ほどで船上にアカモクの小山ができた(5月1日、三重県鳥羽市の菅島沖で)
      アカモクの刈り取り作業。10分ほどで船上にアカモクの小山ができた(5月1日、三重県鳥羽市の菅島沖で)
    • ゆでてミンチ状に加工された菅島産のアカモク。強い粘り気が特徴だ
      ゆでてミンチ状に加工された菅島産のアカモク。強い粘り気が特徴だ

     成長が早く、水質を改善する効果を持つ海藻「アカモク」が注目を集めている。日本各地に自生しているが、多くの地域ではこれまで「漁のじゃまになる」として捨てられてきた。食べると肥満抑制などの効果があることも分かり、各地で商品化の動きが相次いでいる。

     三重県鳥羽市の沖合約2キロに浮かぶ菅島。岩場にはアカモクが密集し、海面が茶色く見える場所もあるほどだ。「島の周りはこんな所ばかり。スクリューに絡む『厄介者』が人気商品になるんですよ」。アカモクを販売している、釣り船店経営の木下公孝さん(37)が海面を指さす。

     刈り取りは4~5月に行われる。海面のアカモクをつかみ上げて、ナイフで刈り取る。港に戻ると、すぐ冷凍庫に。漁がなく手が空く時期に、冷凍庫から取り出して洗い、真水でゆでる。ミンチにしてパック詰めすれば商品の完成だ。

     地元漁協の若手が5年前、会社を設立し、販売を始めた。150グラム入りパックで390円。当初の年間出荷量は数百キロ・グラムだったが、今では8トンまで増えた。木下さんは「漁師が減って島には活気がない。アカモクで若者に仕事の場を作りたい」と意気込む。

    水質改善

     海水の余分な栄養分を取り込むことで成長するアカモクは、水質を浄化し、赤潮の発生を防いでいる。また小魚の産卵場所となるなど、生態系保全の面での役割も大きい。

     宮城県の松島湾では、人工的にアカモクの藻場を作り、富栄養化した海水を浄化する取り組みが続いている。北海道大の宮下和夫教授(水産化学)は「食用に刈り取られるのはアカモクの先端部だけで、茎や根っこは海中に残り、伸びてきたら収穫できる。資源を守りながら使うことで、環境改善につながる」と、アカモク利用の効果を語る。

     近年の研究により、アカモクには健康効果があることも分かってきた。宮下教授によると、アカモクに含まれる赤い色素「フコキサンチン」には、体の代謝機能を向上させ、肥満を抑制する機能もある。色素含有量は、ワカメの約3倍、コンブの約5倍と褐藻かっそう類の中でも特に多いという。

     中部大の林京子客員教授(ウイルス学)によると、マウスにアカモクの煮汁を1週間飲ませたところ、花粉症の症状が3分の1程度に軽くなった。アカモクのぬめりに含まれる「フコイダン」は腸管の免疫細胞を活性化させる機能を持ち、インフルエンザ感染に対しても予防効果があるという。

    各地で生産

     アカモクの販売をいち早く始めたのは、岩手アカモク生産協同組合だ。組合がある岩手県山田町はカキ養殖が盛んな地域。アカモクが養殖施設に付着すると海中に入る日光が遮られてしまうため、漁師は手作業で取り除き、多くを捨ててきたという。組合代表理事の高橋清隆さん(43)は、秋田県でアカモクを食べる習慣があることを知り、「新しい商売にしよう」と1998年に組合を作った。

     2011年の東日本大震災の津波でアカモクは根こそぎ流された。3年間の休業を経て生産を再開してからは販路が広がり、今は従業員7人が働く。高橋さんは「定食チェーン店のメニューにアカモクの小鉢が加わるなど、引き合いが多い。生産が追いつかない」とうれしい悲鳴を上げる。

     利用は各地に広がる。神奈川県逗子市では3月、市内の飲食店がアカモク料理を提供するスタンプラリーを開催。愛知県常滑市の漁師らは、洋上に造られた中部国際空港の護岸からアカモクを収穫している。(小林雄一)

    アカモク
     ワカメなどと同じ褐藻類で岩場に自生し、長いものでは10メートルほどに成長する。ギバサ、ナガモ、ギンバソウなどとも呼ばれ、秋田、山形、新潟県など日本海側では以前から食べられていた。成長が早い、春から夏前が刈り取りのシーズン。
    2017年06月12日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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