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    ゴミの焼却熱 幅広い用途に活用

    トマトやイチゴ栽培 フグ養殖も

     清掃工場などの焼却炉でごみを燃やす際に発生する余分な熱を、トマトなどを育てる農業用ビニールハウスの気温調節や、フグなどの養殖施設の水温管理といった幅広い用途に活用する取り組みが注目されている。

     二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス削減による地球温暖化対策につながり、地域活性化にも一役買うことから、今後導入が進みそうだ。(野崎達也)

    温水で暖かく

     栃木県壬生みぶ町にある、焼却炉メーカー・アクトリー(本社・石川県)のごみ処理工場。隣には、工場に似つかわしくないビニールハウスが三つ並んでいる。同社製の焼却炉から出る温排水の余熱を活用する「エコビレッジ」と呼ばれる施設で、同社がこの春からモデル事業を開始した。

     金属製の配管が張り巡らされたハウスでは、ミニトマトが栽培されている。隣接する工場内の焼却炉で発生した温水が配管に流れることで暖房効果があり、冬でもハウスの気温を最高30度に保つことが出来るという。

     一般に、ごみを燃やす際は焼却炉の温度が上がりすぎないよう、炉の壁の中に冷却水を流す。通常は温水を冷まして繰り返し使うため、熱は捨てられることになる。エコビレッジでは、炉を冷やした後に熱くなった水を「熱交換器」に入れることで、別の水を温める。約80度に達したその水が配管を通じてハウスに送られ、暖房に使われる。冷却水とハウスに送られる温水は循環するので、熱も水も無駄にならない。

     同社は、トマトの他に同県名産のイチゴ「とちおとめ」も試験栽培する。農作物だけでなく、温水で温めた人工海水を使ってトラフグの養殖も行う。栃木県内で、温泉で温めた海水を利用し、トラフグの生育期間を通常の3年から1年に縮めた養殖が行われているのをヒントに考案され、来月から施設内の水槽で稚魚を育てる計画だ。

     同社技術開発グループの田中孝二郎さん(43)は「焼却炉はただの迷惑施設でなく、エネルギーを生み出す可能性がある」と強調し、「栽培や養殖で雇用も生み出せるので、町おこしにもつながる」と話す。同社は壬生町でモデル事業が成功したら、焼却炉とセットで、自治体などに余熱利用システムを販売したい考えだ。

    CO2削減目標

    • 焼却炉で発生する余熱を活用したビニールハウスでミニトマトが栽培されている(20日、栃木県壬生町で)
      焼却炉で発生する余熱を活用したビニールハウスでミニトマトが栽培されている(20日、栃木県壬生町で)

     余熱活用の手段として、焼却時に出る熱で生じた蒸気でタービンを回す「廃棄物発電」も行われている。ただ、タービンを効率的に回すには大量の熱が必要で、小型炉には適さないとされてきた。温水や蒸気の熱を外部施設で使う方式は、施設の大小にかかわらず使えるため、双方の活用が期待されている。

     環境省によると、全国の自治体の清掃工場(約1200か所)のうち、温水や蒸気の熱を別の施設で活用しているのは2~3割程度。用途もプールや浴場に限られている。同省の担当者は「農業や漁業への活用は珍しいが、様々な選択肢があれば余熱活用が進むはずだ」と期待する。同省は、余熱活用の普及で化石燃料の使用を減らし、2030年度までにCO2の17万トン分の削減を目指す。これは、1年間に約5万世帯が排出する量に相当する。

    チョウ飼育に

     環境省は、昨年度から補助事業を開始。アクトリーのほか、東京都武蔵野市や熊本県八代市で、清掃工場の余熱を送る設備の整備費について、2分の1を補助している。

     今年度、同省の補助事業に採択された奄美群島の喜界島(鹿児島県喜界町)では、島内の清掃工場から出る余熱でビニールハウスを暖め、日本最大級のチョウ「オオゴマダラ」を冬に飼育するという計画が進む。

     オオゴマダラは羽を広げた大きさが15センチほどもあり、国内では同島や沖縄県に分布。「南の島の貴婦人」との異名も持ち、喜界町は1989年に「オオゴマダラ保護条例」を制定し、町ぐるみで保護に取り組んでいる。冬は生育しないという課題があるため、同町の担当者は「エネルギーを無駄遣いせずに一年中観光客にチョウを楽しんでもらいたい」と意気込んでいる。

    2017年07月03日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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